国語史資料の連関

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2002-01-01から1年間の記事一覧

2002-09-09

■ [まだ無かった]「情熱」「衒学」「自己弁護」 情熱と云う語はまだ無かったが、有ったら情熱が無いとも云ったのだろう。衒学なんと云う語もまだ流行らなかったが、流行っていたらこの場合に使われたのだろう。その外、自己弁護だなんぞと云う罪名もまだ無か…

2002-09-08

■ [まだ無かった]「献身」 固より「マルチリウム」といふ洋語も知らず、又当時の辞書には献身という訳語もなかったので 森鴎外「最後の一句」 http://kotobakai.seesaa.net/article/8180067.html より転載言及 山鳥重『ヒトはなぜことばを使えるか』p.168ツ…

2002-09-02

■ 貝原益軒日本釈名 一 和語をとく事は謎をとくが如し。其法訣をしるべし。是をとくに凡八の要訣あり。○一に自語《ジゴ》は天地《アメツチ》男女《ヲメ》父母《チヽハヽ》などの類、上古の時自然に云出せる語也。其故はかりがたし。みだりに義理をつけてとく…

詞以舊可用「詠歌大概」

■ 「詠歌大概」 詞以舊可用【詞不可出三代集、先達之所用新古今古人歌、同可用之】 岩波大系『歌論集・能樂論集』p114岩波文庫『中世歌論集』 p118ツイートする

2002-08-31

■ 枕草子(6) 同じことなれども、きき耳ことなるもの。法師の言葉。男の言葉。女の言葉。下衆の言葉には、かならず文字あまりたり。ツイートする

2002-08-30

■ 枕草子(195) ふと心おとりとかするものは、男も女もことばの文字いやしう遣ひたるこそ、よろづのことよりまさりてわろけれ。ただ文字一つにあやしう、あてにもいやしうもなるは、いかなるにかあらん。さるは、かう思ふ人、ことにすぐれてもあらじかし。い…

2002-08-29

■ 徒然草(141) 悲田院尭蓮上人は、俗姓は三浦の某とかや、双なき武者なり。故郷の人の来りて、物語すとて、「吾妻人こそ、言ひつる事は頼まるれ、都の人は、ことうけのみよくて、実なし」と言ひしを、聖、「それはさこそおぼすらめども、己れは都に久しく住…

2002-08-02

■ [東雅]東雅総論(32) 漢土の方音。韓地の方言の如き。此間の語となりし例は。前にもしるせり。又我書の中に。其義を釈せしも見えたり。梵語の此間の語となりし例。其一二をこゝに挙つべし。たとへば猿をマシラといひ。杜鵑をホトゝギスといひ。水をアカとい…

2002-08-01

■ [東雅]東雅総論(31) 海をよびてワタといふが如きは。我国太古の言に見えたり。然るを韓地の方言なりといふ事。聞く人の疑を貽すべければ。其事の由をこゝに註するなり。日本紀の例。凡地名の如きは国史撰述の時の名によられしといふ事あり。これは見る人に…

2002-07-31

■ [東雅]東雅総論(30) 古言の義。猶今も遺れるものあるは。亦その幸にぞありける。たとへば猶此樹を伐りて彼枝を接ぐに。彼枝既に長じて。樹となりぬるに及びて。此樹はたゞ其の根株のあるのみなり。されどまた江南の橘。踰v准而自変為v枳といひし事もあるな…

2002-07-30

■ [東雅]東雅総論(29) 古語拾遺に。書契以来。浮華競興。顧2問故実1。靡v識2根源1といひし誠に然なり。我国の古言。其義隠れ失せし事。漢字行はれて古文廃せしに因れる多しとこそ見えたれ。細かにこれを論じなむには。此語と彼字と主客の分なき事あたはず。…

2002-07-29

■ [東雅]東雅総論(28) 其余の音の如きも。亦これに同じ。また此間の語ひとり漢字の音の転ぜしのみにもあらず。韓地の方言の転ぜしも少なからず。たとへば太古の時よりいひ嗣て。海を呼びては。アマといひしを。また韓地の方言によりて。ワタともいひけり。日…

2002-07-28

■ [東雅]東雅総論(27) 旧説に漢字の音を転じて。和訓となせしありといふ事あり。似たる事は似たれど。其義を尽せりとも思はれず。漢字の音を用ひて。其音の転じぬと見えし類は。彼音を転じて。此語となすに意ありしにはあらず。前にもしるせし事の如く。五方…

2002-07-27

■ [東雅]東雅総論(26) それが中また彼字を読て。此事此物どなせしに。其古訓近訓同じからざるも少なからず。たとへば旧事紀に〓読でシギとなされて。日本紀又これによらる。倭名鈔には又読てシギとなレ。また楊氏漢語抄を引て。田鳥の字読む事亦同じ。日本紀…

2002-07-26

■ [東雅]東雅総論(25) たとへば鋺の字の如き。〓ノ字の俗。〓音豌削也といふ也。此間には金椀となして。読てカナマリといふ。其字の金に従ひ。椀の省に従ひぬるを取るなり。梶の字の如き樹杪也といふなり。此には船柁となして読てカヂといふ。其字の木に従ひ…

2002-07-25

■ [東雅]東雅総論(24) 漢字を取用ひられし後に。彼字を読て此間にいふ所の。いづれの事なり。いづれの物なりとなせし。彼と此との義自ら合ひぬるは。論ずるに及ぱず。或は彼字と此間にいふ所との相合はざるも少なからず。凡これらの類世の人概して乖誤也とい…

2002-07-24

■ [東雅]東雅総論(23) 漢字を用ひて。此国の言をしるされしもの。旧事紀を始とす。其字を用ひられし所によりて。古言の義自ら明かなる事も少からず。日本紀またこれに次ぐ。先達の人相伝て。日本紀の文はすなはち旧事紀に因られしなどいふなり。令義解に釈せ…

2002-07-23

■ [東雅]東雅総論(22) 古言の義を求むるに。古事記にしるせし所。其正を得しと見えし事ども多く。古語拾遺これに次ぐ。諸国風土記の中。其徴となしつべき者なきにあらず。日本紀にみえし所の歌また万葉集の歌の詞の如き古人の釈せし所。心を潜むべき事なり。…

2002-07-22

■ [東雅]東雅総論(21) 或説にゝ我国の言に借語の例あり。他の名と言葉とを。其儘に借り用ひて。名づけしをいふ。日を借りて火とし。天を借りて雨とする類これ也といふなり。我思ふ所はこれもまた転語なり。たとへば。火の如きをも。ヒとしるしたらんには。其…

2002-07-21

■ [東雅]東雅総論(20) 其言同じくして其事異に。其名同じぐして其物異なるが如きあり。されど是等の類は。我国の仮字《カナ》をもてしるしぬれば。其字は同じけれども。これを呼ぷには。其声の平上去入。其音の清濁軽重によりて。各自ら相別れて同じからず。…

2002-07-20

■ [東雅]東雅総論(19) また反語とは。かな返しなり。見ゆを目《メ》とレ。きえをケとし。やすくきゆるを雪《ユキ》とするの類也といふなり。古語に目をばマといひけり。マといふ語の転じてメといひし如きは。或は方言の同じからぬにもやよりぬらむ。見るとい…

2002-07-19

■ [東雅]東雅総論(18) 又其説に転語とは。五音相通によりて名づけしなり。上《カミ》を転じて君《キミ》とし。高《タカ》を転じて竹《タケ》とするの類なり。といふなり。上を転じて君といひ。高を転じて竹といふが如きは。然るべし。君といひ竹といふが如き…

2002-07-18

■ [東雅]東雅総論(17) 其略語の例に。略語とはことばを略していふ。ひゆるを氷《ヒ》といひ。しばしくらきを。しぐれといひ。文出《フミデ》を筆《フデ》といひ。墨研《スミスリ》を硯《スヾリ》といふの類也といふなり。古語に氷をばヒといひけり。またヒと…

2002-07-17

■ [東雅]東雅総論(16) 世の古言を解釈するに。上略中略下略等の説あるなり。我思ふ所には異なり。天地の運。古今の変あるが如きも。なを人生の少長壮大あるが如し。太古の時は人の幼なるが如く。古を相去る事のやゝ遠きに至ては。人のやゝ長じて。かつ壮大に…

2002-07-16

■ [東雅]東雅総論(15) これらの事ども。並に我書に註せし所に見えたり。たとへば日をヒといひ。火をホといふが如きは。並に其音単出して言となりしなり。昼をヒルといふは。ヒといふは日也。ルといふは詞助也。星をホシといふは。ホといふは火也。シといふは…

2002-07-15

■ [東雅]東雅総論(14) また言《コト》といひ詞《コトバ》といふ義をも。よくわきまふべき事なり。音発為言。言之成文為詞とも見えたり。先達の説に。発語の詞なりといひ。詞助也(助詞也)などいひし。皆これ詞也。太古の言の如きは。其音単出して。即ち言と…

2002-07-14

■ [東雅]東雅総論(13) 日本紀に見えし下照姫の歌に。天《アメ》ナルヤといふぺきをアモナルヤといひ。ウナ懸《カケ》ルといふべきをウナカセルといひしが如き。其方言によれりしなるベし。されば此歌は夷曲《ヒナプリ》也とはしるされたる也。此余この語は其…

2002-07-13

■ [東雅]東雅総論(12) 我国古今の言。其声音の転ぜし殊に多かり。その変を尽さんには。悉く挙べからず。其大略の如きは。五方の音同じからざるによりて。転ぜしと見えしあり。五音の文相雑れるによりて。轉ぜしと見えしあり。凡五方の音。軽あり重あり。清あ…

2002-07-12

■ [東雅]東雅総論(11) 今世に行はれぬる対馬伊呂波といふもの。また五音五位図などもいふにや。其字母凡五十字。唇舌牙歯喉の音を列ねて図となし。縦横相転じて相呼ぷ法などあるなり。此図はむかし呉国の比丘尼。対馬国に至りて。国人にをしへたりし所なりと…

2002-07-11

■ [東雅]東雅総論(10) されば古より今に至るまで。海外の人のこゝに来りぬる。我国の人其語を訳するによらずしては。彼情を通ずる事をよくせず。たゞ我方域の内に於て。相言ふ所の多からずして足れるなり。しかはあれど。声成文謂之音、音発為言。言成文為詞…