国語史資料の連関

国語史グループにあったブログ

2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

2013-01-31

■ [言葉とがめ]「御愛乗」 市内のバスガールがサービスに「毎度御愛乗、有難うございます」と云ふ。「御愛乗」なんといやな言葉ではないか。 野崎眞平『眞平随筆』p.49 「妻楊枝」ツイートする

2013-01-30

■ [言葉とがめ]1935年のパパママ問題 朝夕、天照大神を禮拜する大日本帝国で、お父さん、お母さんと云ふべき所を、パパ、ママと言はしてゐる家庭がある。口真似をしたゞけで、ちりけ元がこそばうなる。 野崎眞平『眞平随筆』p.27 「猿の真似」(10.9.20)ツイ…

2013-01-29

■ [発音]準備音 私等の謡は、初字の「あ」を「な」と謡うのは甚だ心得ぬことだという様なことを申された人がありましたが、これは、「あ」が往々、「お」とすぼみたがるのを防ぐ用意として、呼びかけの「なふ」などゝ同様に、ンという準備音を先に出します。…

2013-01-28

■ [発音]お国訛り お国訛りとでもいゝましょうか、アイウエオのイとエとの差別が出来ない人がある。顛倒する人、ガ行の軟濁の出来ない人もあります。「げにげに」の「げ」の如きは、初めの「げ」は本音のまゝですが、二度目の「げ」は、鼻音の入った軟濁とな…

2013-01-27

■ [表記意識][文章作法]『闘文』投書規定 用紙は半紙二つ折り(餘白ありとも切斷する勿れ) 一面十行詰 一行二十四字詰 行数四十行以内 字體は楷書にて清書すべし 各行の間及天地前後は成るべく明け置くべし 一人にて各種の投書をせらるゝ時は各題別の紙を用…

2013-01-26

■ [表記意識][文章作法]『青年志叢』投稿要領 原稿は一行廿四字詰楷書にて発行期日十五日前に差出すべし 但し英語は「ローマン、レター」或は「イタリック」にて可成丈分明に記載せらるべし 『青年志叢』 第壱號 明治23.11.25 (京都) ツイートする

2013-01-25

■ [私が作った]”模造芝”と訳さなくてよかった人工芝 私がアーティフィシャル・ターフの英語にはじめて接したのは12年前だった。[…]私はその小文を抄訳し、レポートとして関係者にお配りした[…]当初私はアーティフィシャル・ターフを何と訳すべきか迷った。模…

2013-01-24

■ [まだ無かった]ハイキング ハイキングといふアメリカ東部の方言は、私が大正六年にはじめてニューヨークに着いて覚えた言葉であるが、それに先立つこと、七、八年以前から私は内地でそれを実行してゐた。 『朝日ハイキングコース 近畿日帰り篇』(昭和11.5 …

2013-01-23

■ [表記意識][文章作法]『中学文壇』投稿要領 中学文壇懸賞論文募集広告一 普通文 八十行限一 書簡文 四十行限一 和文 五十行限一 小説 二百行限一 漢文 二十行限一 漢詩 絶句一 新体詩 七五調一 和歌一 俳句一 英文題は隨意なりと雖も季に関する者は其当季…

2013-01-22

■ [言語生活史]「日本で専売的に製作しているもの」 文字文化のなかで、むかし海外にあったが途絶えてしまったり、最初からなかったようなもので、日本で現在専売的に製作しているものはいくつかある。座談会に新聞連載小説。ほか思いつくままに書き出せば、…

2013-01-21

■ [表記意識][文章作法]学生筆戦場投書規則 第一 本誌は文章練習の雑誌なれば投書は文章に限る 詩歌は掲載せず第二 本誌の投書は叮嚀に添削批評して掲載するものとす第三 投書原稿の上封は必ず左の雛形に據ること 東京日本橋区本町三丁目 博文館編輯局 御中 …

2013-01-20

■ [国語問題]明治27年明治23年の「国語」 余は其学術に就きて一に国語の拡張せざる可からざるを見る。抑も其国固有の学は一国の独立を助くるに極めて必要なる者なり。故に一国の人民にして若し其国固有の学術の何物たるを辨ぜず却て他国の学にのみ沈酔すると…

2013-01-19

■ [方言意識史]「東朝・東日の二大新聞記者とが上方語を流布する」 (二四)東京語と上方語 東日・東朝の若い記者の内には大阪から転勤して有楽町のガード下、さては銀座裏のおでん屋通ひ、上京二三ヶ月にして早くも東京食通を気取るらしい。さういふ先生達…

2013-01-18

■ [まだ無かった]「お好み焼き・たこ焼き」 戦前、お好み焼は"洋食焼"ゆうて屋台で売ってましてん。いろんな具入れて混ぜて焼き始めたんは昭和三十年代からで、それまでは薄う焼いてましてんで。タコ焼かって"タコ焼"言い始めたんは戦後で、戦前は"チョボ焼"…

2013-01-17

■ [まだ無かった][この人が作った]【世界観】 麻宮騎亜とは彼の最初の著作『神星記ヴァグランツ』が出版された直後にその出版記念パーティーで話した記憶がある。その時、「世界観のしっかりした作品を描きたい」と彼が口にしたのが強く印象に残っている。「…

2013-01-16

■ [言語意識史][言語伝説]「水は濁るのをきらう」 家康は入国と同時に家臣の大久保藤五郎に命じて上水道の設置をさせた。神田上水の起りである。藤五郎はこの功績によって「主水」という名を与えられた。家康は、水は濁るのをきらうから、主水の読みを澄んで…

2013-01-15

■ [方言意識史][ここから広がった]「大阪弁を映画で全国の人の耳に入れた」 日本映画で扱うステロタイプの一つに、きまりきった方言があり、以前は田舎をあらわすのに「おら」とか「そうだんべえ」が用いられた。いまは悪徳悪人をあらわすのに「わい」「やっ…

2013-01-14

■ [外国人の日本語など]「支那語ではない。勿論日本の言葉ではない」(三村竹清「一兵卒従軍記」) 聞く所によれば、今度の支那事変には、支那人が日本兵を皆先生《シイサン》と呼ぶさうである。これでも時代の変化がうかゞはれる様な気がする。先生と呼んで…

2013-01-13

■ [方言意識史]「西郷どんは鹿児島弁は使はれぬさうで江戸言葉を言はれる」(松村淳蔵) 松原致遠編『大久保利通』(明45・5、新潮社)pp.16-17 大久保さんは戊辰の前までは始終藩政に尽して居られたが、大西郷は江戸などへも出て広く天下の志士と交はって居た…

2013-01-12

■ [言語政策][待遇表現][言語作法]礼法要項(昭和一六年) 第五章 言葉遣ひ 一、長上に対しては相当の敬語を用ひる。二、自称は、通常「私」を用ひる。長上に対しては氏又は名を用ひることがある。男子は同輩に対しては「僕」を用ひてもよいが、長上に対して…

2013-01-11

■ [外国人の日本語など]西洋人の「ことある・聞く宜しい」(宮武外骨『滑稽新聞』) ◎滑稽なる創傷 ドクトル・サーチライトあなたの国、目下戦争ある。負傷の名前知らぬ宜しくない。私教えることある。聞く宜しい。イよりロへすなわち目から鼻へ抜けた傷が俗…

2013-01-10

■ [近代語]東京の言葉(口語法別記 端書) ○東国の言葉わ、昔わ、京都の人からわ賎しめられて居つた、源氏物語の宿木、東屋などに、東国の言葉を、「あづま声」と云い、平家物語に、斎藤実盛の言葉を、「坂東声」と云つてある、拾遺集に、「あづまにて、養は…

2013-01-09

■ [位相]オーケイ 拇指と人差し指でつくる丸い輪。それは一般の世間では、マネーの意味に使われている。だが、テレビ局などでは、〈オーケイ〉の意味に使用されている。 梶山季之「罠のある季節」?文春文庫*1 p.145 ツイートする *1:初出は1964-65の『週刊…

2013-01-08

■ [文章作法]「おせん泣かすな馬肥やせ」(翁草) 巻之百五十五 小牧長久手戦後家康公上洛の事 作左衛門は万づ無造作にて、或時御用にて遠所に滞留して、留守の妻女へ送文に、 一筆申す、火の用心おせん病すな馬肥せと書送しとぞ。おせんとは女の名なりとか…

2013-01-07

■ [文章作法]「おせん泣かすな馬肥やせ」(提醒紀談) ○制札三条東照宮、参州御手に入し時、本多作左衛門?、高力左近、天野三郎兵衛三人を奉行に仰せつけられ候ところ、これまで今川家領知の村々は、先代の事など申争ひ、おさまりかね候ところもありしかば、…

2013-01-06

■ 日本人の支那語(原口統太郎『支那人に接する心得』) 同文同種と云ふことは便利でもあるが、これが却つて障碍になつてゐる場合がある。今日支那と戦はなければならぬやうになつたのも、或意味から言ふと、この同文同種が崇つてゐるとも言へる。兄弟垣に閲…

2013-01-05

■ 安藤正次「国語史について」『岩波講座国語教育』 わたくしの考へるところによれば、国語史といふものは、わが国語の過去をたづねて有史以前に及び、国語の系統を探つて祖語時代に遡り、祖語から相分れた姉妹語との関係を明らかにして、国語の成立を説き、…

2013-01-04

■ 国語史上の暗黒な空隙(安藤正次『国語史序説』第四章 集中・偏在の時代) 奈良朝時代と平安朝時代との間には、国語史の上に一の暗黒な空隙がある。その間の国語資料は欠けてゐる。和歌にしても、万葉集と古今集との間をつなぐべき資料に乏しい。散文にし…

2013-01-03

■ [方言意識史]「大阪言葉には少しも親しむことが出来ない」堺利彦 「堺利彦伝」 その年の暮、私は久しいあこがれの東京に向って出発した。大阪生活の五、六年間、大阪言葉には少しも親しむことが出来ないで、半熟の東京言葉を誇りとする形であったが、それ…

2013-01-02

■ 柳田国男『方言覚書』自序 方言について私の書いたものは、まだこの以外にも大分散らばつて居る。よい折が有つたらそれも取纒めて、一冊の本にしたい望みはあるのだが、其前に一言だけ、是非とも明かにして置かねばならぬことは、自分が此類の小さな資料整…