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2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

2012-01-31

■ 古きことは辺土にのこりたり。(夏山雑談・巻三) ○西國邊にていふ女の名西國邊には女の名袈裟千代《けさちよ》、袈裟龜《けさかめ》、龜菊《かめぎく》、乙鶴《をとつる》などといふあり。古きことは邊土にのこりたり。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作者:…

2012-01-30

■ 名字・名乗・称号(夏山雑談・巻三) ○名字 名字と云ふべきを俗に名乗と云ふ。又稱號といふべきを俗に名字と云(或苗字)。百三十年計以前までは、武家方にても稱號といひけるにや。平岩主計頭親吉の記されたる書には稱號とあるなり。 日本随筆大成〈第2期 第2…

2012-01-29

■ 和~(夏山雑談・巻三) ○和上臈《わじやうらふ》、和御前《わごぜ》、和殿《わどの》 和上臈、和御前、和殿と云ふ事は、其人を敬ひて云ふことなり。和は日本の號なり。人の貴賎は姓氏によることなり。往古は異國の人多く日本に來り姓を賜はりしなり。されば…

2012-01-28

■ あざな(夏山雑談・巻三) ○麿、太郎、次郎古人の名に、麿の字をつけたるは男子の美稱なり。麻呂と書は假名書なり。かなまろといふ麿は丸なり。彦は男子の美稱、姫は女子の美稱なり。日子《ひこ》日女《ひめ》なり。往昔は呼名に父の官をつけてよびしなり。…

2012-01-27

■ あざな(夏山雑談・巻三) ○字異國には字あり。我國にはあざなつくことなし。今世よび名を字の如く思ふは僻ごとなり。しかれども詩文章家には字をつくなり。詩文章は異國の法なれぱなり。日本の詩文章家の字の法は、姓に一字を加てつくなり。菅三(聖廟ノ御宇…

2012-01-26

■ いみな(夏山雑談・巻三) ○國人「國人」と云字を、「くにたみ」とよむことは、後嵯峨院の御諱の邦仁と申奉りし故に是をさけたる也。又「世人」といふ文字を「よのひと」ゝよみ、或只「ひと」ゝばかりよむ事も、後宇多院の御諱を世仁と申奉りし故なり。 日本…

2012-01-25

■ いみな(夏山雑談・巻三) ○諱諱と云は、我國の故實にて天子に限り申こと也。天子の御名字はいみさけて用ぬことなり。是故にいみなと訓するなり。神野《かみの》(嵯峨帝御諱)郡を新居と改められたる類、國史に見えたり。異國にては天子より庶人に至りて、す…

2012-01-24

■ 同文古来(夏山雑談・巻二) ○同文古來同文古來と云ことあり。是は古書に出たる文言を、一字も違へず其儘にかくことを云ふなり。職原鈔に、帝皇編年記の文を其儘に用ひられたる所もあり、又公家諸法度に禁秘鈔の文を用ひられたる類なり。 日本随筆大成〈第2…

2012-01-23

■ 同字意別(夏山雑談・巻二) ○同字意別同字意別と云ふことは、同字にても名目に依て意の違ふことを云ふ。假令「一人」と云字を、「いちじん」といへば天子の御事になり、「いちにん」と云へば庶人のうへの言なり。又「人形」を音にて「にんぎやう」といへば…

2012-01-22

■ みみず書き(夏山雑談・巻二) ○蚯蚓書わらはべの手習はじめに、見わけがたき文宇を書を蚯蚓書《みみずがき》と云ふは、昔よりいひしことにや。榮花物語に見へたり。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作者: 日本随筆大成編輯部出版社/メーカー: 吉川弘文館発売…

2012-01-21

■ かなづかひ(夏山雑談・巻二) ○豊臣太閤の近士和久何某豊臣太閤の近士に和久何某とかやいひし人は、陽明家の御流をまなびて手書の上手なり。謡の本を書たるを世の人もてあそびけるとなり。濁る假名、清むかなをまぎれぬやうに書き、假名づかひも改め正した…

2012-01-20

■ 記録書(夏山雑談・巻二) ○記録書記録書とは大納言を大糸言、中將を中爿、應永を応永、元和を元禾、嵯峨を山山、醍醐を酉酉と書を云ふなり。釋家にても讀誦を言言、瓔珞を王王、菩薩をササと書類なり。片假名の半體も記録書のごとし。 いわゆる「抄物書き」…

2012-01-19

■ 葦の葉書(夏山雑談・巻二) ○葦の葉書葦の葉書といふは、文章に繪を交て書ことなり。たとへぱ今日は日よりもよく候へぱ〓にて〓つりにまかるべく候などゝ書類也。日蓮上人の歌に、 あしの葉のかたちはふねに似たれどもなにはの人はえこそわたさじ是あしの葉…

2012-01-18

■ わにのつか(夏山雑談・巻二) ○河内國の王仁墓河内國交野郡藤坂と云所に王仁の墓あり。土俗に鬼の塚と云。「わうにん」を「おに」とあやまりたると云へり。〓樂麿按するに、王仁の和訓わになり。古事記に、和邇吉師とあり。日本の人となりたる上は「わに」…

2012-01-17

■ ものを略していふ(夏山雑談・巻二) ○ものを略していふこと「庖丁刀」を「庖丁」と云、「熨斗蚫」を「のし」と云ふ。「奉書紙」、「杉原紙」も略してかみをいはざれども、人々互に意得るととになりぬ。是等の類あげてかぞふべからす。「杉原紙」を「杉原」…

2012-01-16

■ 清みて読ますべきために文字を書きかへたるなり(夏山雑談・巻二) ○宿紙宿紙はもと熟紙と書く。熟の字を清《す》みてよむなり。熟の字を清みてよますべきために文字を書かへたるなり。縮線綾ももとは熟線綾なり。是又清みて名目すべきために文字をかきかへ…

2012-01-15

■ 地名に「陽」を付ける(夏山雑談・巻二) ○國名に陽の字を用ふること甲陽、尾陽などゝ國名に陽の字を用ゐ、或は大阪を阪陽、長崎を崎陽と云こと、近世流俗のやうになりぬ。如何なる人の云ひはじめたるにや。皆是奇異なることを好む人のなすわざなり。或書に…

2012-01-14

■ 国名を「~州」と書く(夏山雑談・巻二) ○國名を何州と書こと大和を和州、近江を江州と書く類は、文字の義理の重きかたを用るはさもあるべし。摂津を摂州、上野を上州、遠江を遠州と書く類は、こゝろを得ざることなり。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作者:…

2012-01-13

■ 国名を「~州」と書く(夏山雑談・巻二) ○國名を和州、河州と書こと國名を和州河州と書ことは、本式にはなき事なり。史類の所見もなし。然れども詩文章に昔より多く用ひ來れば、官名に麿名を用る意なるべし。官名國名ともに、我國の正しき制法を唐名に換て…

2012-01-12

■ 「玉床下」(夏山雑談) ○僧中の書札の脇付 僧中の書札の脇付に玉床下と書きたる多し。俗人も是にならふて書くもあり。玉床は臣下の上には用ひがたし。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作者: 日本随筆大成編輯部出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 1995/02メ…

2012-01-11

■ [語源説]「要(かなめ)」(夏山雑談) ○扇のかなめ扇のかなめは蟹目《かなめ》なり。 『日本国語大辞典』等、「蟹の目」転の説は載せるが、そこに夏山雑談は載せず。「かに」の被覆形に「かな」を想定する説とでも言うか。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作…

2012-01-10

■ [語源説]めったやたら(夏山雑談) ○めつたやたらめつたやたらと云俗語は、樂には八多緊《やたら》拍子と云ことのあれば、是よりいひ出せしことなるにや。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作者: 日本随筆大成編輯部出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 1995/0…

2012-01-09

■ [語源説]音曲などをほむるに「やう/\」と云ふ(夏山雑談) ○音曲などをほむるに「やう/\」と云ふこと音曲などをほむるに「やう/\」と云ふは、「洋々」の字なるべし。論語に「洋々乎盈v耳哉」とあり。孔子の樂をほめ給ひしことぱなり。 如何にも江戸時…

2012-01-08

■ [読み癖]胡飲酒、「こんしゅ」といふべし(夏山雑談) ○胡飲酒胡飲酒「こんしゆ」といふべし。「こいんしゆ」と云ふはあしゝとなり。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作者: 日本随筆大成編輯部出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 1995/02メディア: 単行本こ…

2012-01-07

■ [読み癖]読癖・読み慣わし(夏山雑談) ○朝廷、朝政等の朝「朝廷」「朝政」等の「朝」は濁音なり。「朝夕」の「朝」は清音なり。然れども日本には、古へより清《すみ》ていひならしたり。「朝政」を直に「あさまつりごと」ゝ訓じ來れり。夫木集に、 さばかり…

2012-01-06

■ [読み癖]「昆明池」は名目「こめいち」(夏山雑談) ○昆明池の障子昆明池の障子は名目「こめいち」なり、「こんめいち」と云ふはわろしとなり。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作者: 日本随筆大成編輯部出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 1995/02メディア…

2012-01-05

■ [読み癖]「弘徽殿」名目「こきでん」なり(夏山雑談) ○弘徽殿弘徽殿名目「こきでん」なり。「こうきでん」と云ふはわろしとなり。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作者: 日本随筆大成編輯部出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 1995/02メディア: 単行本この…

2012-01-04

■ 死することを「廣島へゆく」と云ふ(夏山雑談) ○廣島へゆくといふ俗諺西國邊にて卑俗の諺に、死することを廣島へゆくと云ふは、安藝國|嚴《いつく》島は神地にて穢をいむ故に、人死する時は、其死體を片時もおかず。息たへぬればいまだ死せざるよしにて、…

2012-01-03

■ 物のあまりたることを「なほらひ」と云(夏山雑談) ○なほらひ世俗に物のあまりたることを「なほらひ」と云は、直會なるにや。神供の御飯を至尊へ至るを直會と云へり。神社にても神職の人、神供のあまりをいたゞくことをもいへり。俗諺も是によるなるべし。…

2012-01-02

■ 「ほざく」と云は、いやしき言葉にあらす(夏山雑談) ○ほざく下賤の言に、人のものいふを「ほざく」と云は、いやしき言葉にあらず。倭姫ノ命世記に、神賀皆《かんほざき》と云こと見へたり。或|神吉詞《かんほぎこと》、神壽詞《かんほぎこと》、神壽宣《…