国語史資料の連関

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2007-01-01から1年間の記事一覧

2007-12-07

■ 既然態・進行態(松下大三郎『改撰標準日本文法』) (第四編)第十節 既然態既然態は運動性の動作動詞に属する一相であつて動作の全部又は一部の行はれた後に於ける其の動作の効果を表すものである。その全部の行はれた後をいふものを全既然又は単に既然と…

2007-12-06

■ 仮定(草野清民『草野氏日本文法』) 上に陳べたる二種の別は頗る重要の事なるを、近来の国語に其混乱甚しく、且多数の語学者も其意義を誤認せり。即某々の文典どもに、其一法に依る関係を未来とし、其二法の関係を現在と認定したり。されど是は全く文法上…

2007-12-05

■ その時の「たり」(草野清民『草野氏日本文法』) 「来たるこそ」の「たり」は、先に来し雀の尚続きて其時迄もありしことを示すなり。 上に其時といふことをいへり、其時は談ずる時、又は談ぜし時、或は記録したるものに、現在の如く記せる時をいふ。 (原…

2007-12-04

■ 過去の「けり」(草野清民『草野氏日本文法』) 意外なること、俄なること等の意を示す為に用ゐることあり。これは其以前より、即ち過去の時に起り、又過去の時より已にありしことどもを、今始めて知りたる場合、又は眼前の出来事に驚きたる場合等に、多く…

2007-12-03

■ 「き」と「けり」(草野清民『草野氏日本文法』) 「き」は単に過去の動作又は有様を示すに用ヰること、「けり」の過去を示すものと大抵同様なり。但し「き」は人と直接に談話する時、即ち対談する時、又は対談せりと見倣すべき時に多く用ゐる古例なり。「…

2007-12-02

■ [文体][位相]「文の詞を歌によむ事」(本居宣長『玉あられ』) 文の詞を歌によむ事同じき雅言《ミヤピゴト》の中にも、文章に用ひて、歌にはよむまじきも多し、たとへば ふみをやるなどいふことは、雅言ながらも、歌にはよまぬ詞なり、すべてふみのことを…

2007-12-01

■ [文体]「歌と文との詞の差別」(本居宣長『玉あられ』) 歌と文との詞の差別おほよそ同じき雅言の中にも、歌の詞と文の詞と、差別あるがあるを、今の人は此差別なくして、歌の詞にして、文にはつかふまじきを、文につかふことおほし、心すべし、たとへば花…

2007-11-30

■ 漢音が勝つ(童子通) 儒者なればとても、たまたまは呉音も交えねば通ぜぬことあり 人情 世間 是非 日用 今日 城郭 邦域等也数目の字は別して呉音多し。[...]書生ややもすれば俗間通用にも漢音が勝つもの也http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura/do…

2007-11-29

■ [言語生活史][言語教育]素読を習う(露伴) 手習いの傍、徒士町の會田という漢学の先生に就いて素読を習いました。一番初めは孝経で、それは七歳の年でした。元来其頃は非常に何かが厳重で、何でも復習を了らないうちは一寸も遊ばせないという家の掟でしたか…

2007-11-28

■ [言語生活史]音読(片山潜『自伝』) 読書は発声して読むのであった。黙読などと云ふことは殆んどしたことがない 橋元良明「音読と黙読」『言語』1998.2によるツイートする

2007-11-27

■ [位相] 「心も言も事も、上代の人は上代のさま」(『宇比山踏』) 本居宣長 又男は、思ふ心も、いふ言も、なす事も、男のさまあり。女は、おもふ心も、いふ言も、なす事も、女のさまあり。されば時代々々の差別も、又これらのごとくにて、心も言も事も、上代…

2007-11-26

■ [位相]女の言葉づかい (「毛詩抄」) 清原宣賢 婉ハ内言ゾ、女ノ詞ツカイゾ、外言ト言ハ男ノ詞ゾ、男ハ祝着ニ候ナドトイヘバ、女ハヲウレシウ候ナドト言ト同事ゾ 『毛詩抄』1 p82外山映次「敬語の変遷(2)」岩波講座日本語4敬語 p156柏谷嘉弘「古代漢語の…

2007-11-25

■ [位相]男文字をも (「女重宝記」) よつて手習《てなら》ひのはじめには、まづいろはより書習《かきなら》ひ、後《のち》には文章《ぶんしやう》をつらね、男文字《おとこもじ》をもおぼゆるなり。 現代教養文庫『女重宝記・男重宝記』長友千代治校註 p118 …

2007-11-24

■ [位相]男の言葉づかいを女性が言う (「女重宝記」) 男の詞つかひを女のいひたるは耳にあたりて聞きにくきものなり。女のことばはかたことまじりにやはらかなるこそよけれ 国田百合子『女房詞の研究』風間書房松村明『日本語の世界2日本語の展開』中央公論…

2007-11-23

■ [位相][漢語]「若き女房には似つかはしからず」(かたこと)22 一 きのふおとゝひといふべきを 。さくじつ。一《いつ》さくじつといひ。あす。あさてを。みやうにち。みやうごにちぞなどいふやうのことは。児喝食《ちごかつしき》若《わか》き女房《によう…

2007-11-22

■ [位相][漢語]「よみにていふべし」(かたこと)21 一 そのゝちは久しう御めにかゝりまいらせぬといふべきを。其以後《そのいこ》は御意《ぎよい》を得ず。中絶《ちうぜつ》いたし。疎遠《そえん》の至《いた》り無音千万本意を背《そむ》き所存《しよぞん…

2007-11-21

■ 詰めていふ(かたこと)10 一 中《なか》/\といふべきを 「なっかなか」ぞ。「なかなっかぞ」などゝ詰《つめ》ていふこと如何侍らん。されどもかうやうのこと葉は。時《とき》により。ことにしたがひて。いはずして叶《かな》はぬおりも侍るべし。苦《く…

2007-11-20

■連声とてよきことば(かたこと)28 一前《まへ》*1も云る。中/\を。なっかなか。なかなっか 右《みぎ》いつゝのこと葉を。かやうにつめていふこと如何といふ人も侍り 但うへより云つゞけ。又いきほひかゝりていふ時《とき》は。くるしからじといへども。…

2007-11-19

■ [位相]漢字と女性 (「乳母の文」) 阿仏尼 真名は女の好むまじき事にて候なれども 金子彰「位相語の歴史」(『日本語史』桜楓社)ツイートする

2007-11-18

■ [漢語]漢語まじりは生意気か (中島俊子「生意気論」) 漢語英語交りに談話するを以て生意気なりと為すか。 村上信彦『明治女性史2』p90による。ツイートする

2007-11-17

■ [漢語]漢語がまざる (浮雲) 二葉亭四迷 到底解かるまいとはおもひましたけれども試に男女交際論を説てみたのですヨ。さうしたらネ、アノなんですツて、私の言葉には漢語が雑ざるから全然《まるっきり》何を言ツタのだか解りませんて…… ツイートする

2007-11-16

■ [漢語]漢語の難しきもの (福沢全集緒言) 是等の書は教育なき百姓町人輩に分るのみならず、山出しの下女をして障子越に聞かしむるも、其何の書たるを知る位にあらざれば、余が本意に非ずとて、文を草して漢学者などの校正を求めざるは勿論、殊更らに文字に…

2007-11-15

■ [表記意識]楷書と平仮名(伊丹万作) ヒラガナトイウモノハソノ素性ヲ探ルト、イズレモ漢字ヲ極端ニ崩シタモノニスギナイ。スナワチ形カライエバ草書ト少シモカワリハナイノデアル。シカルニ草書ト楷書ハ、コレヲ混ゼコジヤニ布置シタ場合ケツシテ調和スル…

2007-11-14

■ [表記史]公文書は真書で(公式令) 凡、公文者、悉作2真書1。 佐藤喜代治「正書法の歴史的背景」『漢字漢語の研究?』三保忠夫「文書の漢字」漢字講座6ツイートする

2007-11-13

■ [表記史]片仮名もて書たるは紅毛語(『紅毛雑話』) 此書中平仮名をもて書たる中に。片仮名もて書たるは紅毛語なり。猶上下の文、もし混せざらんか為に。「 」かくのごとき点を置たり。 http://record.museum.kyushu-u.ac.jp/komozatu/page.html?style=b&p…

2007-11-12

■ ネバー・好き(獅子文六「自由学校」) 「飛んでも、ハップン! いけませんよ、ユリーにチャージさせるなんて……」「それが、きらい! そんな、ヘンな形式主義、ネバー・好きッ!」 新潮文庫版 p.45 樺島忠夫『日本語はどう変わるか』岩波新書 1981 p.2敬語の本…

2007-11-11

■ [方言意識史]都の言葉(屠竜工随筆?) 都は古へ大内裏の時こそ万国会する所にて、中央の声ならめ、今に成てはしからず。(中略)仮令古より詞にても女にしては可なり、男子においては余りに軽薄にして中央の詞とも聞こえず。 徳川宗賢(1978)『日本人の方言?…

2007-11-10

■ [方言意識史]夷詞(仙覚) 防人等ガ歌ノ詞、ミナコレ夷詞ドモナリ。或ハ又、鬼語ナドモアヒマジハリテ、カタクナナル詞ドモナレバ、末ノ世ノ大和詞ヲモテアソバム人ノ学ブベキニモアラズ。(中略)第十四巻東歌、ナラビニ此巻防人等歌ノ詞、ソノ聞キハ卑シ…

2007-11-09

■ [方言意識史]上方語への意識(橘庵漫筆) 畿内は言葉甚だ乱雑也。分て京摂は他方混じて野となること多し。 徳川宗賢『日本人の方言』筑摩書房(1978)p.84徳川宗賢『日本語の世界8言葉・西と東』中央公論社(1981) p.108ツイートする

2007-11-08

■ [方言意識史]三河なまり(去来) 三河なまりは天下一番 『芭蕉追善之俳諧』の去来の付句安藤正次『国語史序説』徳川宗賢『日本人の方言』筑摩書房(1978) p.82徳川宗賢『日本語の世界8言葉・西と東』中央公論社(1981) p.102ツイートする