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2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

2011-04-30

■ 上杉謙信(和田垣謙三『兎糞録』) West Kensington と云ふ英国の地名を「上杉謙信殿」と覚ゆる等は、類似連想を基礎とする一種の記憶法にして斯かる例は他にも多し。 和田垣謙三『兎糞録』大正2.7.14発行(大正2.12.2 16版による)のp.253ツイートする

2011-04-29

■ 揚げ豆腐(石射猪太郎『外交官の一生』) 降りたいときには、“揚げ豆腐ひや”(I get off here の意)と言えば車掌がおろしてくれますしね」と老夫人は笑うのであった。 石射猪太郎(-1954)『外交官の一生』中公文庫p.94 外交官の一生 (中公文庫BIBLIO20世紀…

2011-04-28

■ [文章作法]蛍が二つ三つ(中村秋香『秋香歌かたり』) 遠江なる柿園嵐牛は、俳句にては其頃知られたる人なりしがある時 鍋洗ふ前に三つ四つ蛍かな といふを得て、かゝる情は歌にては言ひ得がたるべしとおもひ石川依平に示しけるに、依平みて余は俳諧の事を…

2011-04-27

■ [文章作法]蛍が二つ三つ(落合直文『将来の国文』) 米洗ふ前に螢の二ツ三ツ こはある有名なる俳諧師がものしたる句なり、この句を作り出てたる時、みつから大によろこび、当時の奇人香川景樹に示したりしに、景樹見て、いかにもおもしろし、されとその螢…

2011-04-26

■ [わたしが作った]「Hの言葉は私がつくった」 この変態性、変質者にかわるスマートな言葉がないだろうか? 等話しあっていた時、私がそうだ変質者、変態性の頭文字はローマ字の「H」だ、今後は代名詞としてHと呼ぼうと提案した。石川君他クラスメートが素晴…

2011-04-25

■ [国字問題][表記意識]数万ある支那の文字を記憶せんより、我 日本の仮名に悉事を記さば大に便利ならん(本多利明「西域物語」) 欧羅巴《ヨーロツパ》に真行草《しんぎようそう》の文字あるやと問人《とうひと》に答《こたえ》ん。彼国《かのくに》に支那、…

2011-04-24

■ 山田孝雄『国語学史』第四章「漢和對譯の字書の發生」新撰字鏡 篆隸萬象名義、東宮切韻に次いであらはれたるは新撰字鏡なり。この書は僧昌住が宇多天皇の寛平四年?に稿を起し、醍醐天皇の昌泰?年間に完成したる書にして、漢字を標出してその音義を漢文にて…

2011-04-23

■ 山田孝雄『国語学史』第四章「漢和對譯の字書の發生」類聚名義抄 倭名類聚鈔を説けるにあたりて論及せざるべからざるは類聚名義抄なり。この書は俗説によれば、菅原是善の著といはる。若し果してその説の如くならば、倭名類聚鈔よりも古き時代の著といふべ…

2011-04-22

■ [言語生活史]【すみません】 『どうか、お願い』という意味で、『すみません』をよくつかうようになったのは、戦後ではないかと思う。それも女性たちが、しきりにつかいだして、だんだん男たちにも感染したのではなかっただろうか。 古波蔵保好「すみませ…

2011-04-21

■ [漢語]鶯亭金升『明治のおもかげ』漢語を使う奴は嫌いだ また幇間を伴《つ》れて遊びに行った客が、向うから来た娘が美しいのを見て立止ると、幇間が、 「旦那、素敵な別嬪《べつびん》ですネ」と言うと客は変な顔をして、急に歩みを早めながら、 「帰れ帰…

2011-04-20

■ [識字]鶯亭金升『明治のおもかげ』無筆 根岸に住みし頃、近くに小岩井甚吉という職人がいた。当時|草履《ぞうり》の下に板を附けた草履|下駄《げた》が流行して多く売れるので、甚吉はこれを作って相応に儲《もう》けていたが、妻は病身なので子がなく、…

2011-04-19

■ 鶯亭金升『明治のおもかげ』鷲の鶏卵・モウは牛なり 鷲の鶏卵猫遊軒伯知《みようゆうけんはくち》は松林伯円《しようりんはくえん》の高弟で、明治の代に新講談で売出したが、北海道の講談をやった時に、うっかり調子に乗って「深山の木の上に鷲《わし》の…

2011-04-18

■ 大矢透『音圖及手習詞歌考』 第二章 阿女都千詞 第四節 阿女都千詞の行はれし時代 阿女都千詞の行はれし時代はといふに、先づ、初めて此の名の見えたるは、宇都保物語なれば、其の書の年代を定めざる可らず。そは、黒川春村の墨水遺稿に、此の物語のことの…

2011-04-17

■ 大矢透『音圖及手習詞歌考』 第二章 阿女都千詞 第三節 阿女都千詞の成立 阿女都千詞の成立は、當時通用の假名を、一音につき、最も普通に用ゐらるゝものを取り集めて同音無き、四十八字を得、これだに記憶したらんには、口舌上の言辞は、自在に記し得らる…

2011-04-16

■ 大矢透『音圖及手習詞歌考』 第二章 阿女都千詞 第二節 阿女都千詞に對する先哲の所見 阿女都千詞につきて、先哲の説を擧ぐれぱ、北邊随筆に、 亡父また云、なには津あさかやまの後は、あめつちほしそらといふことを手ならふ人のはじめとしけるにや。文字…

2011-04-15

■ 大矢透『音圖及手習詞歌考』 第二章 阿女都千詞 第一章 阿女都千詞の出典 第二章 阿女都千詞 第一章 阿女都千詞の出典阿女都千の名の、初めて見えたるは、宇都穂物語国譲中にして、次は順集、次は口遊、次は相摸集なり。北邊随筆には、加茂保憲女集にもあ…

2011-04-14

■ 大矢透『音圖及手習詞歌考』第三章 大爲爾歌 此の歌は、口遊《クチズサミ》に見えたるものなるが、この口遊といふは、前章にいへるが如く、源爲憲が、天祿元年の作なり。此の書、將門記と同じさまに、影寫印行せしかば、今も之を藏せる家、少からず。され…

2011-04-13

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』屬 二「疑屬」(9) 谷風にとくる氷のひまごとにうちいづる浪や〔ガ〕春のはつはな〔カ〕。 月や〔ガ〕あらぬ〔カ〕春や〔ガ〕むかしの春ならぬ〔カ〕我身ぴとつはもとの身にして。 花のちることや〔ガ〕わびしき〔イカ〕春霞…

2011-04-12

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』屬 二「疑屬」(8) ○第二[さゝぬ中のや](註一)といふ。 上何は名・頭・脚・装の引靡・往・等也(二)。下何は名・裝の引靡・脚・さま/゛\也。此うちあひ尤おほし。 里いづれも[や]をまはして、下何に[カ]をつけて心得べし。さ…

2011-04-11

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』屬 二「疑屬」(7) 何や何二例(註一)○第一[さす中のや]といふ。(二) 上何は名・頭・脚・装の引靡・等也。下何は疑のかざし也。(三)[や]を[ハ]と里して、下何に[ゾ]をつくべし。 春霞たてるや〔ハ〕いつこ〔ゾ〕みよしのゝよし…

2011-04-10

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』屬 二「疑屬」(6) 何かや 何は裝の靡・脚・等也。(註一) [カドウダイノ]と里す。但例おほくみえす、又[とかや]とよめるをば、心えて[トヤラヂヤノ]・[トイフゾイノ]・とも里すべし。 はりはこのふたつのそでにさしつれどひと…

2011-04-09

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』屬 二「疑屬」(5) 何かも 何は名・脚裝の引靡・也。(註一)里[カサテモ]といふ。裝をうけたるをば[ノカサテモ]とも里すべし。凡、かな・かも・は全同心の詞也。め(目)にも心にもあまれることを、先かとうたがひてやがて[な]又…

2011-04-08

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』屬 二「疑屬」(4) 何かは 何は名・裝の引靡・也。里[カイノ]といふ、心をかへして(註一)落着する詞なり、又[何は][何かは]とかさね詞によみ、さらでもちかく[は]をうけたるをば、心得て[トイフモノカイノ]と里すべし。 こゑ…

2011-04-07

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』屬 二「疑屬」(3) 何か何二例(註一)○第一おもふ中のか(二)といふ。 上何は名・裝の往・頭・脚・也、下何は裝の引靡・脚・樣々也。(三)里[か]をまはして、下何の下に[カトオモフ]とつくべし。 まてといひし秋もなかばになりぬ…

2011-04-06

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』屬 二「疑屬」(2) 何か 何は名・裝の引靡・脚・也。(註一)里言同、但、引歴をうけたるをぱ、心得て[ノカ]とあつべし。 秋の野の草のたもとか(ロ同)花すゝきほにいでゝまねく柚とみゆらん。 わがうへに露ぞおくなるあまの河と…

2011-04-05

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』屬 二「疑屬」(1) 凡、疑のあゆひさま/゛\につきてよめど、そのもとは、たゞ[や]・[か]・のふたつなり。[や]・[か]・ふたつながら、里言に[カ]とあてたるによりてまどふ人おほし。その中にも、名・かざし・裝・などをうけ…

2011-04-04

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』おほむね下(9) 一 三こゑ(註一) 井・筆・などよむこゑを、ゆきごゑといふ。もろこしごゑの平なり。(二) 野・船・などよむ聲をたちごゑといふ、もろこしごゑの去たり(三)。日・花・などよむこゑをかへりごゑといふ、上なり。(…

2011-04-03

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』おほむね下(8) 一 六運(一) 開闢より光仁天皇の御世までをおしなべて上つよといふ。其後より花山院御世まで二百五年を中むかしといふ。後白河院御世まで百七十二年を中ごろといふ。四條院御世まで八十四年を近むかしといふ。…

2011-04-02

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』おほむね下(7) 一 たて(經)ぬき(緯)世にいふ五十韻なり。經緯圖 あぬき いぬき うぬき えぬき おぬき 世にたてぬきのことわりをしらぬ人、あたて(經)のおもじをわたてにおき、わたてのをもじをあたてにおくはあやまれり。師…

2011-04-01

■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』おほむね下(6) 立居圖ツイートする