2011-04-28
■ [文章作法]蛍が二つ三つ(中村秋香『秋香歌かたり』)
遠江なる柿園嵐牛は、俳句にては其頃知られたる人なりしがある時
鍋洗ふ前に三つ四つ蛍かな
といふを得て、かゝる情は歌にては言ひ得がたるべしとおもひ石川依平に示しけるに、依平みて余は俳諧の事をしらねば、とかく評を加ふべきならず、但し歌にては鍋洗ふ前をといはざるべからず、をといへば即ち鍋洗ふ前を三つ四つ蛍が飛びかふさま言外にしらるべし。前ににては鍋を洗ふ前の草村などに居るさまにて、とびかふさまと聞えぬなりとありければ、嵐牛深く感じ、これより常に依平が教を受けて俳句も大にすゝめりと春畊氏語られき、http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/872765/99