国語史資料の連関

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2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

2007-07-31

■ [国字問題]正岡子規「明治卅三年十月十五日記事」 ISBN:4003101308 妄想また妄想、終に漢字制限論に移る。文部省が尋常小学四年間に教ふべき者として漢字千二、三百を択びたるは一日一字を覚ゆるほどの割合になりて字数の上にてはほぼ適度を得たるべし。さ…

2007-07-30

■ [方言意識史]岡鬼太郎「話術の変遷」 七 標準語、都會語、東京語 それから又訛りといふこと、皆さんの中には地方の方も居らつしやいませうが、東京では能く地方の方の訛りのことを申します。放送局のアナウンサー諸君の中にも訛りがあつて聽き苦しい、お國…

2007-07-29

■ [国字問題]正岡子規『墨汁一滴』 漢字廃止、羅馬字(ローマ )採用または新字製造などの遼遠(りょうえん)なる論は知らず。余は極めて手近なる必要に応ぜんために至急新仮字(しんかな)の製造を望む者なり。その新仮字に二種あり。一は拗音(ようおん)…

2007-07-28

■ [表記史]正岡子規『墨汁一滴』「余が書ける漢字の画の誤」 黄塔(こうとう)まだ世にありし頃余が書ける漢字の画(かく)の誤(あやまり)を正しくれし事あり。それより後よりより余も注意して字引をしらべ見るに余らの書ける楷書(かいしょ)は大半誤れる…

2007-07-27

■ 五音 やがて五音《ごいん》──古代の音韻学でいう喉音《こうおん》、顎音《がくおん》、舌音《ぜつおん》、齗音《ぎんおん》、唇音《しんおん》──が出なくなる。 式貴士「吸魂鬼」(『吸魂鬼 (角川文庫 (5547))』所収)一般的な古代音韻学の五音は唇音・舌…

2007-07-26

■ [方言意識史]高知の薩摩弁 〔九・二一、高知新聞〕今度高知縣の巡査は悉皆薩人を御採用になるとの風説、クヤ〳〵我輩の理解が其樣に分やんかとの御叱には毎度ハヤ恐縮いたします、何でも巡査は土地の人でないと人民の情實が通ぜず、況して言語の了解《わか…

2007-07-25

■ [辞典類]康熙字典の活字化計画 〔八・一三、東京日日〕信州上諏訪の版木師小澤半兵衞と云ふが、此頃同國池田町の共益社にて活版で康熙字典を刊行すると聞き、流石書物で苦労する職程ありて、字典の本字は三萬四千三百三十有七字、然るに本邦今日に流布する…

2007-07-24

■ [漢語]漢籍が売れ出す 〔五・三〇、有喜世〕近来は飜譯物の書類は大にすたれて漢籍が売れ出したゆゑ、此せつ四書五経史記の類の出版に着手の人が多く、また小学本は品限に至って少なくなりしと。http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1920347/136 『新聞集…

2007-07-23

■ [漢語]「漢語便覽抔を読み習ふ」 〔四・七、朝野?〕[...]戎座にて西南夢物語を興業せしより俳優は憖いに可笑しな漢語を遣ってならぬと、何れも幕間には漢語便覽抔を読み習ふことゝなり、西郷のお蔭で俳優が幾許か物識りになるとの話http://dl.ndl.go.jp/in…

2007-07-22

■ いろは順と五十音順 〔六・五、大阪新聞〕今般戸籍編製法に伍組、いろは之しるしを以て分之候様後座候處、いろはの儀は仏因果悟道の歌に御座候、而て文明開化の御時節に不都合に奉存候に付、五十音のあいうえお之順席を以て番号に仕、[...]」 『新聞集成/…

2007-07-21

■ [方言意識史]公文の方言 〔三・二九、朝野〕第三九號 ○諸公文中、往々各地の方言及び他方へ通ぜざる名称等相用ひ、事理明暢を欠き、夫れが為め往復推問を重ね候儀も有之候條、自今右方言名称等相用ひ候節は注解を加へ可差出、此旨相達候事 明治八年三月廿…

2007-07-20

■ [方言意識史]大坂で東京の真似 〔三・三〇、東京日日〕大坂では近ごろ東京の真似をする事が大壯に流行て[...]男は生意気な番頭など、おかしき江戸語を吐き、之を聞くに捧腹すべし。 『新聞集成/明治編年史2』明治八年ツイートする

2007-07-19

■ [方言意識史]林芙美子「風琴と魚の町」 私は、言葉が乱暴なので、よく先生に叱られた。先生は、三十を過ぎた太った女のひとであった。いつも前髪の大きい庇(ひさし)から、雑巾(ぞうきん)のような毛束(けたば)を覗かしていた。「東京語をつかわねばな…

2007-07-18

■ 論語後藤點 平仮名付 ろんぎょしきのせいかにいはく。こうし なは きう あざなは ちうじ。そのせん そうひと也 ちゝはしゅくりゃうこつ。はゝはがんし ろのじゃうこう二しう二ねん。かう?しゅつのとし。じう一げつかうしをもって こうしを ろの しゃうへ…

2007-07-17

■ 「お武家さま言葉」(中島らも) MHK語学講座の時間です。今日は「生活に役立つお武家さま言葉」をお送りします。[……]いやいや、浅学ゆえご無礼をつかまつるが平にご海容たまわりたい。 ぷるぷる・ぴぃぷる (集英社文庫) 作者: 中島らも出版社/メーカー: …

2007-07-16

■ [方言意識史]寺山修司 今日では、標準語は政治経済を語ることばになってしまった。──人生を語るのには、もう方言しかのこっていない。──「誰か故郷を想はざる」 寺山修司『ポケットに名言を』角川文庫 p.159ツイートする

2007-07-15

■ [方言意識史]三田村鳶魚「ヂヤ」だらけ(『時代小説評判記』) 邦枝完二氏の『女忠臣蔵』「ヂヤ」だらけ この人の書いたものは、他の人のものに翫べて、耳障りになるような言葉や、目障りになるようた文字が少いのでまことに心持よく読める。大衆小説とい…

2007-07-14

■ [辞典類]井上十吉「字書談」 『日本及日本人』670号(大正四年十二月十五日)pp.91-98 字書談と題名は甚だ漠として居るが固より英和対訳辞書を主としてである。 今爰に五十年間に於ける翻訳文学の変遷の一斑を見るべきものを挙げたいと思ひます。けれども…

2007-07-13

■ [言語生活史]土佐の父母 健依別「土州漫筆(上)」『日本及日本人』670号(大正四年十二月十五日) 頽廃の実はまた言語と市街の体裁の上に顯はれたり。従来、土佐人の其父母を呼ぶには、一般市人と雖も猶ほ『オトウサマ』『オカアサマ』『オトウサン』『オカ…

2007-07-12

■ [言語生活史]江戸人の言語生活(「江戸自慢」) 人気の荒々しきに似ず、道を問へば、下賎の者たり共、己が業をやめ、教ることていねいにして、言葉のやさしく、恭敬なること、感ずるに甚だたり。 樋口清之『関東人と関西人』ホーチキ出版 p154http://www.san…

2007-07-11

■ [言語生活史][言語教育](貝原益軒) 六歳の正月、始めて数の名と我邦の仮名を習しむべし、伊呂波は益少し。あいうえおの五十字を教ふべし、和語に通ずるに利あり。(略)八歳は(中略)漢字の草書を習はしむべし。十歳(中略)真字を習はしむべし。 芳野兵作…

2007-07-10

■ [方言史]浜荻(三册子) い勢の濱荻、芦にあらず。荻に似たる物にて別也。いせに限也。 去来抄/三冊子/旅寝論 (岩波文庫 黄 208-1) 作者: 向井去来,服部土芳,潁原退蔵出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1991/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 11回この商…

2007-07-09

■ [言語意識史]清濁(三册子) 清濁、にごるを清は難なし。清ムを濁るは恥也。かり衣、から衣、この二は清也。此類皆下を濁る也。旅衣の類也。はしひめ、さよひめ、さ保姫、此三清て外は下を濁る也。濁るは二ツ物をつゞくるには必あり。酒も大酒といえはば、ざ…

2007-07-08

■ [表記史]促音 平井昌夫『文章採点』講談社ミリオン・ブックス* はねる音の「っ」を小さくする習慣はまだ確立していません。一流の文芸雑誌でも、今もって「つ」や「よう音」の「や、ゆ、よ」を小さくしないでいるのがあります。 昭和35年4月10日発行ツイー…

2007-07-07

■ [外国人の日本語など]黒島伝治「武装せる市街」 「早よ、S病院、去(チュイ)。あなたのお父ツぁん、負傷あります。日本太夫(リベンタイフ)、診(み)て、出血あります。クヮイクヮイデ。」 詰襟の善人らしい支那人は、日本語と、支那語を、ごちゃごち…

2007-07-06

■ [方言意識史]田舎ことば(安藤鶴夫) 安藤鶴夫「演芸とことば」(『講座日本語3日本語の種々相』大月書店1955 p162-174) こうした田舎ことばを作り出したであろう江戸の落語家たちが、当時遠い旅をすることなく、せいぜい近県から江戸へ働きにきていた権助…

2007-07-05

■ [この人が作った]横山隆一の擬態語 http://kokugosi.g.hatena.ne.jp/kuzan/20040901の関連。 現代マンガの全体像 (双葉文庫―POCHE FUTABA) 作者: 呉智英出版社/メーカー: 双葉社発売日: 1997/01/20メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 29回この商品を含むブ…

2007-07-04

■ [字音][音韻]有坂秀世「唐音に反映したチ・ツの音價」(部分) 國語のチ・ツ及びヂ・ヅが奈良朝時代に於て各ti, tu, di, duの音であつたこと、又それらが室町末期の頃既にtʃi, tsu, dʒi, dzuの音になつてゐたことは、今日既に定説になつてゐる。私がここで考…

2007-07-03

■ 新屋敷幸繁「日本語の歴史と発展の原理」大東亜文化協会編『日本語の根本問題』 http://webcatplus-equal.nii.ac.jp/libportal/DocDetail?txt_docid=NCID%3ABN11600184 増進社 昭和18.2.10 p227狂言の言葉は、単なるざれ言葉ではなく、当時の模範的言葉・…

2007-07-02

■ [謡曲共通語]〈浄瑠璃の言葉〉 ◎司馬遼太郎『菜の花の沖』第二巻(文春文庫 昭和62.3.10 p307)☆司馬遼太郎『菜の花の沖』第六巻あとがき 昭和57.9(文春文庫 昭和62.5.10 p395)〔商人は浄瑠璃の言葉、武士は狂言の言葉とする〕(堀畑正臣氏の御教示によ…