国語史資料の連関

国語史グループにあったブログ

2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

2009-04-30

■ 書生語(当世書生気質) 作者曰く、須河の言語ハ如何なる地方の言語なるかと不審をいだく人もあるべし。こは何處の方言と定まりたるものにあらず、書生社會に行はるゝ駁雜なる轉訛言語と思ふべし。盖し書生中には上方の生にありながら態々土佐方言などを眞…

2009-04-29

■ 九州 トキニ貴公の本国は何所だ。九州らしく考えるが」 男「ハイお尋ねに預かりましてお答え中すも恥入ますがお察しに預かる如く大分県の者であります」旦那様のお詞も九州らしゅう伺いますがモシヤ左様で御座りませんか」 胤員「オオいかにも俺も九州じゃ…

2009-04-28

■ [外国人の日本語など]森繁久彌 「アー、また来いよ、また来い」と言ったのは中国人です。そのくらいおおまかですね、あすこの連中は。「また来いよ。また来るイイ」なんて。だから、ちょっとね、我々と大きさが違うと感じましたネ。 森繁久彌?86才芸談義聞…

2009-04-27

■ ルビ 漢字のかなは訓讀音讀どちらにしていゝか他のものに分らない事が多いからつけて下さい夫でないと却つてあなたの神經にさわる事が出來ます尤も社にはルビ付の活字があるからワウオフだとか普通の人に區別の出來にくいものはいゝ加減につけて置くと活版…

2009-04-26

■ 漱石のルビ校正 校正に付ては今朝申上候通りなれど御參考迄に大體の御注意を致候 一 大體新聞切拔を信用する事(是はルビ付の活字あるのみならず。小生自身眼を通して特殊の場合には特殊のカナを付けた積故也) 二 誰の眼にも間違と見ゆるは構ハズ御訂正の事…

2009-04-25

■ 英語の漢語 「シエクスピヤ」の墓碑の石摺の寫眞を見せて、こりや何だい君、英語の漢語だね、僕には讀めないといつた。 夏目漱石「倫敦消息」ツイートする

2009-04-24

■ ジョンソンの字引 「ジヨンソン」の字引には「オートミール」…蘇國にては人が食ひ英國にては馬が食ふものなりとある。然し今の英國人としては朝食に之を用いるのが別段例外でもない様だ。英人が馬に近くなつたんだらう。 夏目漱石「倫敦消息」 有名な話だ…

2009-04-23

■ [方言意識史]上方弁は口馴れませんから、矢張り東京弁で 市助酒(三笑亭可楽*1) 是れは大阪の落語《はなし》でございますが手前は東京の事に直してやって居ります。今回は筋を原作の儘で申上げますが、上方辯は口馴れませんから、矢張り東京辯で御免を蒙…

2009-04-22

■ 四声(徂徠『韻槩』等) 音韻均呼。無有低昂。謂之平聲。韻昂於音。謂之上聲。韻低於音。名之去聲。韻尾迫断。名之入聲。 異文(唐韻指迷) 音韻均呼。無低昂。謂之平聲。韻昂於音。謂之上聲。韻低於音。謂之去聲。韻尾迫断。謂之入聲。 ツイートする

2009-04-21

■ 四声(元和韻譜) 平聲哀而安,上聲厲而舉,去聲清而遠,入聲直而促.引用 玉篇巻末「四聲五音九弄反紐圖序」徐銑「詞苑叢談」韻鏡開奩六声音対磨光韻鏡本朝文鑑提綱 沈氏が四声韻譜に、平聲者|衷而《たゞしうして》安,上聲者|勵而《はげしくして》舉,去…

2009-04-20

■ 四声(康煕字典等) 平聲平道莫低昂,上聲高呼猛烈強,去聲分明哀遠道,入聲短促急收藏ツイートする

2009-04-19

■ [漢語]血 血屬 一門血親血叔血泊裡 ちみどろの中から血淋々 ちみどろ血性 をとこぎ血光災 劍難がある血口子 金瓶梅 尖指甲〓すること 兩道~~~」血の出るほどつめる血海 ~~也似干保命 いのちがけのかかりあひ血路 殺開條~~ 命かけの道を切ひらいた …

2009-04-18

■ [漢語]「漢語通」(安愚楽鍋) おたげへに漢語通に因循家だとか、旧弊家だとかいはれるのだから、大きにりうかうにおくれてきやしたが、にはかにざんぎりにもなられず、洋ふくのさんだんもできねへから、半髪あたまをたゝかれてゐるのだが、じつにわうらい…

2009-04-17

■ [言文一致]「言文一致と敬語」 例へば「云々です」「云々であります」「云々でござります」のたぐひは、すべて私交的の敬語に傾いて、之を其のまま文章にすれば、何うも敬語に過ぎたやうに感ずる、それかと言ツて、「云々だ」と言ひ放てば、独語的、すなわ…

2009-04-16

■ [文体]談話体・演説体 今日の口語にも談話体の外に、演説の体もある。論文の体もある。小説の体もある。紀行、叙事其々の体があって、自然の傾向は、言文一致会の談話体一点張といふことを許しては居らぬ。 国学院雑誌 明治三四年五月二〇日号 森岡健二「…

2009-04-15

■ [文体][言文一致]談話体・演説体 今日の言文一致体の中には、談話体を用ゐるものも往々あるが、この体には、口語の各体の中の短所をのみ具へて居る様に思はるる。「あります」とか「御座ります」とか「なければなりません」とかいふ嫌なる敬語沢山の体は冗…

2009-04-14

■ [言文一致]ござんす・ござります 細川君の「御座んす」フルベツキ君の「御座ります」等は其用所甚多く文章としては見苦しきの憾なきにあらざれども是則ち其人の僻を真写したるものなれば敢えてとがむるに足らず 唯後進演説者をして其長をとり短を捨つる亀…

2009-04-13

■ [言文一致]ぢゃ 我輩ノ遺憾トスル所唯一点アリ加藤先生ノ演説中ニ「ぢゃ」トイフ事度々見ユ例ヘハ「道徳ハ社会ノ維持ト保存トノ為メニ出来タモノヂャ」ノ如シ此ハ筆記ノ儘トハ思ハレヌナリ(東洋学芸雑誌五九号) 森岡健二「言文一致体成立試論」ツイートする

2009-04-12

■ [方言意識史]織田作之助 今日大阪の言葉は文学や演劇や映画の中で、三番手のぼうっとした間抜けた男を表現する手段として嘲笑的に使われている。ひとつにはつねに阿呆の相棒を必要とする落語や漫才が大阪弁の品位を下げてしまったこともその原因であろう。…

2009-04-11

■ 訳文 訳文に字義・文理・句法・文勢と云ことあり 字義と云は一字一字の意なり 字を積んて句となし句を積て文になしたるものゆへ字義が本なり 薬一味一味の能を知らざれば薬方配剤はならぬ如くなり 材木一本一本の大小長短使ひ様を知らざれば家は立られぬ如…

2009-04-10

■ [言語意識史][漢語]このごろの無学な連中は無茶な言葉を作りよる。【惜敗】 漢学者だった私の父*1は、生前この「惜敗」という言葉を見かけるたびに、「敗ケヲ惜シムとは一体何んのことや。このごろの無学な連中は無茶な言葉を作りよる」 と苦笑いしていた…

2009-04-09

■ [言語生活史]江戸っ児の軽佻浮薄な癖 今日のように話下手になったのは、江戸っ児の軽佻浮薄な癖がしみじみ厭になって、中年頃から自分で自分をたしなめるように仕向けたせいである。(中略)こう話下手になってしまっては、どうも淋しくていけないし、文章…

2009-04-08

■ [言語意識史]近代劇のセリフ 近代劇のセリフの云い方は、新派から出ないで舊派から出ている。 谷崎潤一郎『青春物語』中公文庫 p162ツイートする

2009-04-07

■ [方言意識史]長田幹彦と谷崎潤一郎 関東者は関東者らしくテキパキ物を云え! 私は、幹彦君が習い立ての京都弁で藝者としゃべっているのを聞くと、ムカムカとしてこんなことを云いたくなった。(中略)こんな風だから、結局私は上方言葉を覚えずにしまった…

2009-04-06

■ [方言意識史]上田敏(谷崎潤一郎) 「先生の御家庭ではお子さんたちが京都弁を使うようにおなりはしませんか」と、私は始めて当り障りのない質問の機会を掴んだ。すると先生は、「いや、それだけは厳重に警戒しています」と、潔癖らしくキッパリと云われた…

2009-04-05

■ [方言意識史]蔑視されやすい行動の処理に比較的むいている 大阪弁は、日本の地方語のなかでも、もっとも広い流通領域を開拓した。そのプロセスで、大阪弁自身にも変容がおこり、この言語のもつ地方性も次第に制約されるようになった。これを下からの言語標…

2009-04-04

■ [漢語]保昌、和歌に漢語 藤原保昌、歌をうらやみて、 早朝におきてぞ見つる梅花を夜陰大風不審不審よとよみたりける。和泉式部ききて、歌詞にはかくこそよめとて、 朝まだきおきてぞ見つる梅の花夜のまの風のうしろめたさにとやはらげたりける。同じ心とも…

2009-04-03

■ [方言意識史]京ことばは京都弁ではない 大阪は大阪弁、東京は東京弁でもよい。しかし、京ことばは京都弁ではない。京ことばは別格なのである。京ことばにとって、大阪弁も東京弁もいなかことばだ。 梅棹忠夫「京ことばのしおり」(『梅棹忠夫の京都案内』…

2009-04-02

■ [方言意識史]京ことばには、大阪弁のような…… 京ことばには、大阪弁のような直截さと簡明さはとてもありません。大阪弁の、あの肺腑をえぐるえげつなさ、あるいはまた、あのおとぼけをともなった交渉力は、京ことばにはとても期待できません。 梅棹忠夫「…

2009-04-01

■ [方言意識史]大阪風に云うと照れくさく 私はどうしてもアクセントはどこまでも大阪で言葉は東京と云う変な調子の他所行き言葉にかえてしまった。近頃のようにテレビ、映画、劇等で大阪弁や京都弁が、流行のようになると、きゝつけぬ人も余りないが、その頃…