国語史資料の連関

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2009-04-11

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訳文字義・文理・句法・文勢と云ことあり 字義と云は一字一字の意なり 字を積んて句となし句を積て文になしたるものゆへ字義が本なり 薬一味一味の能を知らざれば薬方配剤はならぬ如くなり 材木一本一本の大小長短使ひ様を知らざれば家は立られぬ如くなり さて次に文理を知らずんばあるべからず これは字の上下の置様なり 同じ文字で字数も同事にても上下の置きやうにより意かはるなり 此文理と句法とは違ふなり 文理は二字と文字をかさぬる処にははやいるなり 句法とは一句の上に巧拙を論ずるはなり 文勢は全体の文勢なり 故に文を書に先つ字義文理を合点すれば唐人詞になるなり 句法文勢は唐人詞になりての上にて文の上手下手へかかることなり 故に字義文理の違ふと云ことは唐人にはなきなり 句法文勢は唐人も文者でなければとくと合点ゆかぬなり さるにより字義文理も知らずして句法文勢を論ずる、いきすぎたることなり

徂徠の「訓訳示蒙

市川孝「江戸時代の文章論」