国語史資料の連関

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2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

2009-03-31

■ [方言意識史]九州の方言が分からぬ甲賀者 日本の忍術使い、甲賀者は切支丹以前から存在し、島原の乱にも幕府方、松平伊豆守が甲賀者を用いたことが、その息子の日記に見えている。甲賀者は天草四郎の部下の農民に変装して籠城の敵軍にもぐりこむことに成功…

2009-03-30

■ [方言意識史]「ポンポン云いまくる言い方は大阪がはるかに進んでいる」(坂口安吾) 中食はお二人前でございますか、と訊きにくる。そこで、あるいは新聞社からお客があるかも知れないから、しかし、その理由まで彼女に語ってきかせる必要はない。とにかく、…

2009-03-29

■ [方言意識史]文部省からの助言で「大阪弁的ニュアンス」 読売テレビが、文部省から企画協力予算の援助を受けて制作中の『茶の間の歌』は、大阪市内の小市民の家庭を描いたホーム・ドラマですが、テレビ婦人学級の社会科篇としての狙いを持つものなので、と…

2009-03-28

■ [この人が作った]法善寺横丁 長谷川幸延 マスコミにのる大阪弁といえば、町の名前で有名な「法善寺横丁」は、作家の長谷川幸延氏が名付親だそうです。それまでこの一角は、法善寺という寺の境内にすぎなかったものを、ここを舞台に漫才の世界を描いた小説…

2009-03-27

■ [言語意識史]外来語風 すべて蛮国の名に、イギリス・ヱウロッパなどゝ云。または蘭人の持てるゾンガラス。ボウトルなど奇妙の称呼なり。往年平賀源内が持てる平日の道具へさま/\の蛮銘をたはふれに名付けたる中にも風流の蚊払を製したり。くる/\と振廻…

2009-03-26

■ [方言意識史]「奥州訛を實地に聞て來よ」 (饗庭篁村)紀ノ上太郎に六七種の院本あり、焉馬の白石噺も紀ノ上太郎がおもに作したるものにて、上太郎一名にては「志賀の仇討」「糸櫻本町育」などあり、(中略)焉馬に白石噺を作らする時も、奥州訛を實地に聞…

2009-03-25

■ [方言意識史]東京の魚屋・九州訛の巡査(柳橋「伊勢詣」) どうしても東京の調子でなくてはならないものは魚屋さんだそうで、夕河岸《ゆうがし》の鰯《いわし》など売って歩く所を見ると、誠に威勢《いせい》がいい(中略)これが京都の錦《にしき》、大阪…

2009-03-24

■ [方言意識史]「大坂生れにて詞遣ひの訛れると衣裝の華奢なるとの爲……退け物にせられ」 番町學校に山崎勇といふ活撥にて勉勵なる男生徒と中島花子といふ學科は出來ねど容貌好き女生徒とありき。花子は大坂生れにて詞遣ひの訛れると衣裝の華奢なるとの爲衆生…

2009-03-23

■ [位相][漢語]農夫・少年男女 譯文は文壇に老いたる不知庵の筆としては熟せりといふべからず。彫刻師の父なる農夫の詞に、ござりましねえといふ如き訛を用ゐながら、少年男女の對話抔には、片假名まじりの論文を讀む如き口調あり。生硬なる漢語の少くなりし…

2009-03-22

■ [言葉とがめ]【もうじ】 第二のむだ口。無教育といふにもあらざる女の文にお目もうじ御はんもうじとあるは、お氣もうじながら何處かの訛の脱けぬのなるべし。 森鴎外「雲中語」鴎外全集24 p.108新編文反古(水野醉香)ツイートする

2009-03-21

■ [言葉とがめ]【とうどう】【つんけんどん】 皮肉。到頭の意味のとう〳〵をとうどうとあり、甚しきはどうどうとありしやうなり。(さし出。馬方ではあるまいし。)とう〴〵の方は此作者のみならず、この頃數〻見る所なり。何處かの國訛りより來りしものにて、…

2009-03-20

■ [方言意識史]「小説の詞は土地にかまはずいづれも東京言葉なるは……」 贔負。(略)岩橋一家の西國訛は、作者の熟したる所とて誤りはなけれど、あらずもがな。天保老人。小説の詞は土地にかまはずいづれも東京言葉なるは、例の實際/\といはるゝに似げなき事…

2009-03-19

■ [方言意識史]「東京語七分に方言三分の類が幾多ある」 江戸子。近頃の小説を見ると、人物の話といふものが東京語七分に方言三分の類が幾多あるが、あれは如何か注意をしてもらひたいもので、此篇お樂の語にも所々方言が出る、爲にどれほど興味を損じるか知…

2009-03-18

■ [謡曲共通語](八戸) ご家中言葉に代表される八戸の丁寧語は、藩政時代、藩士に謡曲を奨励したことに始るとされています。 謡曲は、当時の諸国に通じる共通語の役割を果たしていたようで、参勤交代の殿樣の出府に際し、お供の江戸詰の藩士が、方言で苦労…

2009-03-17

■ [方言意識史]「共通語を、ラジオが全国にバラまき、それを東京語と錯覚」(宇井無愁) この人たちは、なぜ口をきかないのか。口をきくと損をすると思ってるのだろうか。地方から出てきたばかりで、緊張しすぎてるのか、方言コンプレックスから、なるたけ口…

2009-03-16

■ [方言意識史][言語生活史]「東京弁になろうとしても東京弁になり得ず」(斎藤茂吉) 私が東京に来て、連れて来た父がまだ家郷に帰らぬうちから、私は東京語の幾つかを教わった。醤油《しょうゆ》のことをムラサキという。餅《もち》のことをオカチンという…

2009-03-15

■ [方言意識史]「東京の言葉だけでやろう」(ビートたけし・高田文夫) たけしさんが、ひとつだけキメとこうって言い出したのは、東京の言葉だけでやろうっていうことなんですよ。何しろあの頃テレビは漫才ブームで、どこ見ても「何言ってまんねん、何言って…

2009-03-14

■ [方言意識史]歌の世界の方言は東北弁だけ(大瀧詠一) 歌の世界に、笠置シヅ子を代表とする大阪弁を除いて、方言で登場したのは"東北弁"を除いて他にないのです。(中略)三橋美智也の『お花ちゃん』、菊地正夫の『スタコイ東京』、吉幾三の『オラ東京さ行…

2009-03-13

■ [方言意識史]「大阪弁やなにかで幽霊が出てもあんまり怖くない」(円生「三年目」) 幽霊というものはこりゃ陰気なもので、後ろに柳という木を描きます。柳は陽木で、その後ろへ陰気な幽霊が出るというのがこれが釣合なんだそうで……、どこの幽霊でもたいて…

2009-03-12

■ [方言意識史]「猫にだって言う」 岩淵 (略)戦前、四年間ほど大阪高等学校の教師をしていた時なんですが、東京なら教師が来ますと生徒は「来た、来た」と言うわけですね。ところが「来はった」と言う。そこで、君たちは敬語を心得ているな、とほめてやっ…

2009-03-11

■ [方言意識史]「東京の者にも分かる大阪弁」 一般的にいって、アクの強い上方の芸は東京で受けないし、淡泊な東京の芸は上方で受けなかった。初代の桂小南が売れっ子になったのは例外で、それは鳴り物入りの派手な演出で東京の者にも分かる大阪弁をつかった…

2009-03-10

■ [方言意識史]「大阪の言葉が東京の人たちにわかるようになったきっかけ」桂米朝 大阪の言葉が東京の人たちにわかるようになったきっかけは、大正になって曾我廼家五郎・十郎の喜劇が東上して公演をもってからのことではないかと思う。 桂米朝『私の履歴書…

2009-03-09

■ [方言意識史]「東京の人にもよく分る大阪弁」桂文楽 小南師は上方から来て大へんな人気でして、何しろ男がよくって、東京の人にもよく分る大阪弁(今のように上方のコトバが東京の人ヘツーカーで分りはしなかった時分です)で、鳴物入りの噺で花やかにごきげ…

2009-03-08

■ [方言意識史]「関西一円ぐらいしか通用せなんだ」桂米朝 それまで非常に世間が狭い芸やったんです。関西一円ぐらいしか通用せなんだですわ、昔は。――上方落語がですか。米朝 はいはい、東京だけはちょっと別ですけどね。あとは本当に関西一円、四国とかね…

2009-03-07

■ [方言意識史]ヤクザの広島弁と九州弁(松田修) J*1の当初の設定は、広島県福山市であった。「仁義なき戦い」のメイン言語であったあの幼児語めいて稚く柔かい中国方言の、それゆえに無頼の幼児的本質に意図せずして逼《せま》る効果が、雄《おす》くさいひ…

2009-03-06

■ [方言意識史]ヤクザの広島弁(笠原和夫) 体育会系で喧嘩が強い、と笠原和夫にきかされたことがある。「仁義なき戦い」の金子信雄(山守親分)の広島弁は、若いころの岡田社長(当時は京都撮影所長)が脚本に文句をつける時の憎々しい口調を想い出しで書いた、…

2009-03-05

■ [方言意識史]ヤクザの広島弁(笠原和夫) 笠原 たかだか一週間位ぴょこぴょこ広島へ行ったって何にもならないよ。何も分らない。こんなの取材のうちに入らないよ。 中島 でも、随分ヤクザの人とはかなり突っこんだあれはあったでしょ。 笠原 いやあ、話とい…

2009-03-04

■ [方言意識史]九州弁の政談(永井荷風) 物音の中で最もわたくしを苦しめるものは、板堺一枚を隔てた隣家のラディオである。 夕方少し涼しくなるのを待ち、燈下の机に向おうとすると、ちょうどそのころから亀裂の入ったような鋭い物音が湧き起って、九時過ぎ…

2009-03-03

■ [位相]陸海軍 私は映画(テレビ映画を含め)録音を業としている者です。一月号の柴田武先生の「現代イントネーション」を拝見して、むかし、海軍で、独特のイントネーションで号令を掛けていたのを憶い出しました。たとえば、「気をつけ」の号令を、陸軍では…

2009-03-02

■ [方言意識史]巡査の薩摩言葉 『何で先刻から烏鷺々々《うろ/\》しちよるんかア。』 『胡乱《うろん》な奴ぢや無かぢやらう。汝《わい》が面ア毎日見て知つちよるけんが、胡乱な奴ぢや無かごたる。けえどんが、もう汝三時ぢやないか。度々|彼方《あツち…