国語史資料の連関

国語史グループにあったブログ

2003-03-01から1ヶ月間の記事一覧

2003-03-31

■ [言語生活史]記憶術の始め(明治事物起原 第七学術) 和田守菊次郎、記憶術の発明を発表せしは、明治二十八年なり。ところどころにてその実験を試み、連絡なき数字等をいひあてること、これを掌上に探るがごとし。同年七月ころ、類似の同法、陸続世に出づ…

2003-03-30

■ [言語生活史]大橋図書館の始め(明治事物起原 第七学術) 明治三十五年六月十五日、大橋図書館開業す。同日はあたかも博文館創立の十五周年記念日なり。同館は、大橋佐平が、川上大将の旧邸を買ひ、その邸地内を敷地として、建設に着手し、後嗣新太郎が、…

2003-03-29

■ [言語生活史]女速記者の始め(明治事物起原 第七学術) 女子速記者が、公開演説場に出でて速記をなせるは、佃与二郎の門弟なる二女子(大沢とよ十七年、中村たま二十四年)が、明治二十二年十二月九日、厚生館の廃娼演説会の速記に出でしを嚆矢とすべし。ツ…

2003-03-28

■ [言語生活史]漢学の末路(明治事物起原 第七学術) 明治二年、集議院にて、欧米の文明国同様にする方策を得んとて、おほいに官民の建白を募れり。前島来助(後の名は密)が、漢学を廃して、仮名を一定の国字とし、国文を定むべき建白を出せるは、このときな…

2003-03-27

■ [国字問題]仮名がき論の始め(明治事物起原 第七学術) 明治七年五月発行『明六雑誌』第七号に、清水卯三郎の平仮名の説あり、平仮名にて、日本文を書くべきを論じたり。「則余ガ〈舎密ノ階〉ヲ訳述シテ同志ニ謀ル所以なり」とあり。氏の舎密書に、仮名書…

2003-03-26

■ [学史]偽版類版本と大阪(明治事物起原 第七学術) 東京出版の書籍にて、その偽版類版本の出るは、大阪に多し。表むきになりしものに左の数点あり。(括弧内は、その被害者) 和訳英辞林(さつま辞書)、和英辞林集成(ヘボン辞書)、条約十一ヶ国記(福沢氏)、世…

2003-03-25

■ [言語生活史]外国語学校の始め(明治事物起原 第七学術) 明治二年、開成所?に英仏二語学科を設け、ついで独語を加へ、六年五月に、かつて外務省?に設けしところの独露清語学所?を文部省に併管し、これを外国語学校?と称せり。 すなはち七年十二月、英語科…

2003-03-24

■ [表記史]五十音中の奇字(明治事物起原 第七学術) 著者が寺子屋より、新設の小学校に転学?せしは、明治七年なりと思ふ。新入の初等八級生として所要の数科書?を一冊買へり。本の名は、いま記憶になきも、喜びてこれを自宅に持ち帰り、一枚を開き見て驚け…

2003-03-23

■ [言語生活史]国民英学会(明治事物起原 第七学術) 明治二十一年、米人イーストレーキと磯部弥一郎と協力、国民英学会を創建す。神田錦町一丁目にあり。 国民英学会 小原弘道 日の出る国の人等が月の入る国の学びの道そ開くるツイートする

2003-03-22

■ [国字問題]国語問題(明治事物起原 第七学術) 明治になりて、わが国語と文章との間に、大溝渠あるを不便とし、両者を相近づかしめんと論著せしは、実に明六社諸同人に始まる。ローマ字仮名字?のことは、別項これを述べたれども、なほ、当時の世論一斑を抄…

2003-03-21

■ [言語生活史]国語伝習所(明治事物起原 第七学術) 国語伝習所は、日曜日ごとに、国語国文を研究するを目的とし、大成中学校内にあり。明治二十二年十月の創立なり。ツイートする

2003-03-20

■ [学史]増訂華英通語(明治事物起原 第七学術) 増訂華英通語?は、半紙判一冊、万延庚申歳快堂蔵版慶応義塾蔵版之印あり。福沢範(字は不囲)諭吉の漢文序あり、庚申之春|桑方西斯哥《サンフランシスコ》港に航し、清人子卿の原本を得、それに和訳および発音…

2003-03-19

■ [学史]清水卯三郎小伝(明治事物起原 第七学術) 清水卯三郎は、西洋文化の輸入者なり。文政十二年三月四日、武州羽生町に生まれ、長ずるにおよびて、寺門静軒、芳川波山等について、漢学を学び、また箕作元甫について蘭学を学べり。 安政元年、露艦の伊豆…

2003-03-18

■ [近代語]社会学の始め(明治事物起原 第七学術) 社会学は、ギゾー、バックルの文明史、およびケーリーの経済書に系統を引き、スペンサーの社会学、一時もつとも盛んに行はれ、有賀氏これを応用して、社会進化論を著はせり。 社会の語の幼名(明治事物起原…

2003-03-17

■ [近代語]社会の語の幼名(明治事物起原 第七学術) 漢語の社会は、もと、土神の祭りと、人の集会の語にて、『正法念経』第九巻に、「彼の人是の如く社会等の中に妄語し悪説す」などあり、村人の集まりといふくらゐの意義なり。 それが、明治維新直後には、…

2003-03-16

■ [言語生活史]新旧書店の交代期(明治事物起原 第七学術) 洋書店丸善の創立者は、福沢諭吉と交際あり、何彼と、福沢氏に相談し、洋書店の魁をなし、つひに、今日の盛を致せりと聞く。同じ福沢氏を崇拝しながら、立派の老舗を破産させし岡嘉のごときもあり…

2003-03-15

■ [言語生活史]辞典出版の流行(明治事物起原 第七学術) 明治三十九年前後、辞書辞典と名付くものの出版多し。その内重なるは左のごとし。概して糊と鋏にて成りたるが多し。 絵画辞典・高等小学校教科書辞典・数学辞典・幾何学辞典・家庭辞典・理科辞典・作…

2003-03-14

■ [言語生活史]スペル和訳書の始め(明治事物起原 第七学術) 英人ウエブストル氏のスペルリーングブツクを、東京西村周助訳、明治五年正月官許、京都書房合梓、小本一冊、ナンバー二十九までを訳し、十二までは、その訳語とよみ順を、数字にて示せり。 ヒー…

2003-03-13

■ [近代語]精神科学?の訳語(明治事物起原 第七学術) 精神科学に関する心理学・倫理学?・哲学・論理学等、今日使用する新訳語?は、加藤弘之・西周諸老を始め、井上哲次郎・外山正一等、若手の訳語にて、普通語となれるものも多し。 いま、井上氏の談話の要…

2003-03-12

■ [言語生活史]小学校読本の始め(明治事物起原 第七学術) 明治五年七月、学制?を布告し、全国に、小学校の創置を命じ、旧寺子屋教育の面目を一新せんとせり。ただ教員と教科書の供給を先とし、まつ師範学校を開きて教員?を養成し、読本の発行を急ぎ、とも…

2003-03-11

■ [国字問題]小学仮名つかひ(明治事物起原 第七学術) 小学校にて用ひる漢音*1の仮名つかひは、発音のまま教、協、喬等はみなキョーと書くの類、ーを長音符として用ふべき旨、明治三十三年樺山氏の文部大臣時代、制限漢字一千二百字の表とともに第二号表に…

2003-03-10

■ [近代語]性法の語の始め(明治事物起原 第七学術) 『万国公法』巻一に、「世人若シ国君無ク、王法無ク、天然同居シ、其来往相待ツノ理ヲ究ムレバ、応ニ当ニ如何スベキ、此乃チ公法ノ一種、名ケテ性法ト為ス…… 其謂ハユル性法トハ他無シ、乃チ世人天然同居…

2003-03-09

■ [学史]速記術の発明(明治事物起原 第七学術) 慶応四年六月刊、黒田氏の『事情補』に、疾書術の一章あり、田鎖氏の速記術以前十五年の記事なり。「疾書術は、近代の発明なり、都て筆を攬て事を記するに、速なること電光の雲を射る如し、其法、通用の二十…

2003-03-08

■ [学史]田中義廉と那珂通高(明治事物起原 第七学術) 文部省にて、最初に出せる小学読本に「田中義廉編輯那珂通高校正」とありたれば、幼時これを読みたる著者は、よくその名をそらんじ、いまに忘れず。 明治五年五月版『官員全書』海軍省の部に、「海軍中…

2003-03-07

■ [学史]大学文学部の始め(明治事物起原 第七学術) 明治十年四月、綜合の東京大学開設せらるると同時に、法学部および理学部とともに、新たに文学部を設置す。法理の二部が、ともに旧開成学校の二部を継承せるに似ず、文学部だけは、全然新設なるを異とす…

2003-03-06

■ [学史]大学予備門の作文科(明治事物起原 第七学術) 東京大学予備門は大体、もと東京開成学校と東京英語学校の延長ともいふべく、その明治十一年六月改正の教則を見るに、四ケ年を通じて作文および修身の科なく、ただ「和漢学」として、日本地誌要略・国…

2003-03-05

■ [学史]大学における古典講習科(明治事物起原 第七学術) 明治十五年五月三十日、東京大学文学部附属として古典講習科を置けり。これより先、総理加藤弘之、挙世滔々として洋学に趨り、本邦古来の文化のよりて起こるところの古典を顧みる者なからんとする…

2003-03-04

■ [近代語]女学の新語(明治事物起原 第七学術) 明治六年十月版『学問のもととすゑ』に、「中にも女学、母教とて女も学問して、物の道理に通じ、其子を教へ育つることを大事とす」云々。また明治四年十一月九日、留学五少女皇后宮に謁見の節、「追々女学御…

2003-03-03

■ [言語生活史]直訳本の流行(明治事物起原 第七学術) 英文を義得せんとする初学者用として、リーダーの直訳本の発行、一時に流行せり。明治十六年四月四日の『絵入自由』に、「ウヰルソン氏第一読本直訳、右はウイルソン第一リードルの訳文(錦織精之訳)に…

2003-03-02

■ [言語生活史]賃訳所の始め(明治事物起原 第七学術) 依頼に応じて、洋文翻訳をやるところは、明治五年秋に始まれり。『雑誌』第五九号広告に、神田雉子町三十番地翻訳所の広告あり。 十行二十字一枚につき 英文和訳金一円、和文英訳金三分、 この時代は、…