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2002-01-01から1ヶ月間の記事一覧

2002-01-31

■ [和訓栞]和訓栞大綱(31) ○釋日本紀に假名の字は誰人の作る所そ 答大藏省御書の中肥人之字六七枚はかりあり 其字皆假名を用う 此をもて始とする歟といヘり 本朝書籍目録にも肥人書五巻と見ゆ 今其傳を聞す 松下氏の説に今西國の人文字の異体を謂て肥後字を…

2002-01-30

■ [和訓栞]和訓栞大綱(30) ○書史會要に帝師巴思八采梵文?創為國字字母四十三と見えたり 是所v謂蒙古字也 それか中に五字連續してあいうえをにかよふ文あり もとより悉曇の本序也といへり 又かきくけこに通する連字あり 又會要?に我國字の事を評して聯輳成V字…

2002-01-29

■ [和訓栞]和訓栞大綱(29) ○傍假字平假字ともに漢字の省文草變にして梵字韃字?朝鮮字?蒙古字?の類にあらす よて眞字假字?と稱せりまんなかんな?とも見えたり 枕草紙にさうがなといひ源氏物語に草にも眞名にもといふ 草は假字を指ていふ也 又科斗書梵に摩那書…

2002-01-28

■ [和訓栞]和訓栞大綱(28) ○朝鮮の讀法字に助聲ありて此方のてにをはの如し 諺文とて此方のいろはの如きもの有て字の側はらに細書して讀あり 字音の異なるのみにて我國の讀法と異なる事なし 夷狄の言語萬國皆かくの如しといへり しかはあれと西川氏の説に亜…

2002-01-27

■ [和訓栞]和訓栞大綱(27) ○諸越には観花聴笛なと先用をいひて後に體をいふを此間には花をみる笛をきくとやうに體よりいひならへりといへり 西土にも先體後用なるもあり 我邦にも先體後用なるもまゝあり されと大抵かゝる所以をもて我讀書の法も大に異れり …

2002-01-26

■ [和訓栞]和訓栞大綱(26) 〇西土の言語は多く日本の言語は少し また此方にありて彼方になく彼邦に有て此邦になき事も侍れハ悉く漢字に該嘗しかたし よて古人もあなかちに漢字に執すましき事也といヘり ツイートする

2002-01-25

■ [和訓栞]和訓栞大綱(25) ○事物の和語に西土の音を轉用せしも亦多し されハ韵學私言に若夫華音則名稱言語之間多依稀可原者如呼火《ホ》曰|奉《ホ》則淺喉之|噴《ホ》也 叶音|〓《ヒイ》則如軽唇之飛 七月|流火《リウヒイ》是也 氷《ビン》爲飛 土地《ツウチ…

2002-01-24

■ [和訓栞]和訓栞大綱(24) ○我邦もと文字なし 西土の文字を借て用を辨せり されは假字書に非されは盡しかたき事もまゝ多し 梵漢?の如きは元來字と聲と相ならへり 謝霊運?か説に胡字一音不v得v成語既不v成v語不v得v爲物名要須字足然後可得名物不牽他ノ語足句…

2002-01-23

■ [和訓栞]和訓栞大綱(23) ○あて字を書ことは或は本據なき熟字をつくり或は正義ならぬ文字をもて牽強附會し書るをいふ也 はしり書とハなほざりにて心にもいらぬをいふ ちらし書といふハ色紙短尺艶書なとにいへり 散亂の體也 はなち書ハ源氏に見ゆ をきなき比…

2002-01-22

■ [和訓栞]和訓栞大綱(22) ○和名鈔郡郷の名に相樂をさがらか 設樂をしだら 餘綾をよろぎ 物理をもとろゐ 訓〓をくるべき 益必をやけひとゝ讀が如きハ音の轉せる也 ろゐ反り也 又周淮をすゑとよむハしう反す呉音ゑ也 杖部をはせつかべ從省をしとむ平安をあゑ…

2002-01-21

■ [和訓栞]和訓栞大綱(21) ○地名の字音常途に異れり 和名鈔に大内を於遠宇知とし十市を土保知とし置津を乎木津とするの類也 西土にも地名にては文字の音常に變する事多し 集韻に朝那は縣ノ名朝追輸ノ切 音株 朱提は縣名 昔殊時 須句は地ノ名 句音衢等枚舉に…

2002-01-20

■ [和訓栞]和訓栞大綱(20) ○名物の文字日本紀に あまを白水郎と書し つきを桃花鳥と書し しとゝを座鳥と書し 萬葉集にほとゝぎすを霍公と書し あせみを馬酔木と書し 倭名鈔に田鳥をしぎとし 海老をえびとし 鹿鳴草をはぎとし 野老をところとし 山薑又山葵を…

2002-01-19

■ [和訓栞]和訓栞大綱(19) ○倭字と稱するもの[麻呂]を[麿]に作るハ[日本紀]に出て後の史傳多く[麿]に作れり されと[日本紀]にかゝる例なくまた多く[麻呂]二字を用られたれハ傳寫の誤成へし [はた]を[畠]と書ハ[類聚国史]に[鎮祭高畠陵]と見えたり [倭名鈔]に…

2002-01-18

■ [和訓栞]和訓栞大綱(18) ○古書に用來れる字 今の韻書をもて正しかたきもの多かり 杜をもりと訓する日本紀新撰字鏡に見えたり 萬葉集に神社をもりとよめり もりは神のます所をいひて社地には必す杜の樹をうゝる事神代紀に見えたり 社をこそと訓するも日本紀…

2002-01-17

■ [和訓栞]和訓栞大綱(17) ○彼字を讀て此事此物になせし古今の説同しからさるも少なからす たとヘハ日本紀に〓讀てしきとす 倭名鈔にハ〓[龍鳥]讀てしぎとし また漢語抄を引て田鳥の字よむ事亦同し 日本紀に朴讀てえとす 倭名抄には榎讀てえとするか如き 日…

2002-01-16

■ [和訓栞]和訓栞大綱(16) ○和名鈔にたひを鯛とし さけを鮭とし 鯵をあちとし 鯰をなまつとし 鵤をいかるかとし、ふゝきを蕗とするの類 今の本草字書には其義見えす されと其引用られたる崔禹錫か食経によれは その物よくあへり 此食経ハ諸本草諸韻書にも引…

2002-01-15

■ [和訓栞]和訓栞大綱(15) ○新撰字鏡に訓のみを舉て音義を闕たる字多し 今の韻書に求得さるものも居多《ソコバク》也 たま/\韵書に收めたるも義と訓と齟齬せるもあり されは石積か新字 肥人書の類にもあらす 序にいふ小學篇の字にて寛平の比ほひに用來れる…

2002-01-14

■ [和訓栞]和訓栞大綱(14) ○古事記日本紀に健を建 弦を玄 材を才と書し 記に蜈蚣を呉公 紀に脆を危 〓[舟同]を同と各偏を省きて書せしハ古への一體と見えたり 西土も古字多く偏冠なとなくて一字にて通用せしことあるに同し ツイートする

2002-01-13

■ [和訓栞]和訓栞大綱(13) ○本居氏?の説に古事記は同音の假名の中にも語意によりて常に用る字を分てり おには淤意二字を普く用る中に大《オホ》には意富とのみ書て淤を書例なし 女姫なとのめには賣をのみ書て米を書す 妹のもにハ毛をのみ書て母を書す 神のみ…

2002-01-12

■ [和訓栞]和訓栞大綱(12) ○漢字をもて倭語を記せし假名の書法 古事記ハ呉音のみを取用ゐ日本紀 萬葉集 和名鈔等ハ音訓を併せ取て書せり|旁假字母《カタカナイロハ》假字の書體も亦同し 又日本紀 古事記及令式等は皆清濁を分てり 倭名抄に至てはやゝ清濁を通…

2002-01-11

■ [和訓栞]和訓栞大綱(11) ○文章と口語とのわかちは聖武紀に文、則皇大夫人語ハ則大|御祖《ミオヤ》と見えたるか如き是也 されハ皇大夫人と書ておほみおやとよむへき也 音讀と訓讀とのわかちハ廢帝紀に敬依2舊典1追上2尊號1策稱勝寳感神聖武皇帝1諡稱天璽國…

2002-01-10

■ [和訓栞]和訓栞大綱(10) ○古語拾遺に書契已來浮華競興顧テ問2故實1靡v識2根源1といへり 我國の古言其義隠れ失せし事 漢字行ハれて古文癈せしによれるもの多しとこそ見えたれ 細かに是を論しなんには此語と彼字と主客の分なきことあたハず 我國の言は太古の…

2002-01-09

■ [和訓栞]和訓栞大綱(9) 〇一語多義にわたり一句数意を兼るは倭語の妙也 よて古事記日本紀にも歌ハ皆字音のみを用られたり 萬葉集には字義を兼て取れるをもて種々の書體を立られたり 歌はうたふの義 聲に發して聞を要とす 詩のことく文字韵律をもて主とすヘ…

2002-01-08

■ [和訓栞]和訓栞大綱(8) ○古言の略せるかことくなるは其朴也 是を略していひしにはあらす 其朴なるか變して文となりぬる其言も亦自ら長くなり長きことすてに極りぬれは是を略していはさることを得す 此を花に比するに上世の言の如きは其|〓蕾《つぼみ》也 …

2002-01-07

■ [和訓栞]和訓栞大綱(7) ○古今集の序にやまと歌ハ人のこゝろをたねとしてよろつのことのはとそなれりけると書出して一集の大體をのへ和歌の本意を盡せり 種といひ葉といふは皆たとひ也 人の心物に感せさるほとは草木の種の土の中に在る如し 既に感するにい…

2002-01-06

■ [和訓栞]和訓栞大綱(6) ○言といひ詞といふ義をもよくわきまふへき事也 聲成v文謂2之音1々發爲v言ト々之成v文爲v詞とも見えたり 先達の説に發語の詞也といひ 詞助也なといひし皆是也 太古の言の如きは其音單出してすなはち言となりし多かり 或はこれをいは…

2002-01-05

■ [和訓栞]和訓栞大綱(5) ○西土《モロコシ》は韻語也 我邦は訓語也 韻語ハ文字によらされは其意義解しかたし よて文字多からされは通用しかたし 訓語はその意義詞の上にありて文字に意あるにあらす よて假用て足れりとす 詩の句と歌の詞とを考て知へし 訓語…

2002-01-04

■ [和訓栞]和訓栞大綱(4) ○鄭夾〓か説に梵人長2於音1所v得從v聞入華人長2於文1所v得從v見入といへり 我邦の言詞を尚ふ西竺の音韻を尚ふか如し 音文の二に就ていハゝ凡そ人生れて言ハさるハなし 言ヘハ自ら聲音存す聲音ありて後に文字あり 文字ハ言語の象に見…

2002-01-03

■ [和訓栞]和訓栞大綱(3) ○西方諸國のこときは方俗音韻を尚ひて文字のこときは尚ふ所にあらす 僅に三十餘字をもて天下の事を盡しぬれは其聲音もまた多からさる事を得へからす 漢土のこときは其尚ふ所文字にありて音韻の學のこときは西方の長しぬるに及ハす …

2002-01-02

■ [和訓栞]和訓栞大綱(2) ○凡天下の言に古言あり今言あり 其古今の言に方言あり 方言の中にまた各雅言あり俗言あり 古言の雅なる後の俗言となるあり 古言の俗なる後の雅言となるあり 爾雅に古言今言其異あるをときて釋詁といひ 古今の間四方の言よく通する事…