国語史資料の連関

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2009-01-01から1年間の記事一覧

2009-08-01

■ 佐藤義亮 【美文】 「美文」という言葉は、今の人たちは文学辞典でも引かなければわかるまいが、『帝国文学』によって大町桂月、武島羽衣、塩井雨江の三青年詩人が、在来の雅語古文にならいながらも、一種清新の内容と声調とをもって、散文詩的の観あるも…

2009-07-01

■ [謡曲共通語]辻邦生 明治維新の折、東北弁と薩摩弁では話が通じないので、謡をうたってやっと意思を伝えたという笑話が残っているが 辻邦生「遠い外国語 近い外国語」辻邦生編『外国語ABZ』p.10 ツイートする

2009-06-01

■ 字余り(本居宣長・字音仮字用格) 歌に、五もじ七もじの句を一もじ餘して、六もじ八もじによむことある、是(れ)必中に右のアイウオの音のある句に限れること也【エの音の例なきは、いかなる理にかあらむ、未v考】。『古今集』より『金葉』・『詞花集』な…

2009-05-06

■ です(大槻文彦) 「です」わ、「でござります」が、いろいろに遷りかわつて、段々と約まつて出来た語で、そのうつりかわりのまち/\なことわ、次のようである。 但し、「で」と合わせれば、指定の助動詞のようになるが、「で」を除けば、独立の「ある」と…

2009-05-05

■ です(大槻文彦) 「です」わ、「でござります」が、いろいろに遷りかわつて、段々と約まつて出来た語で、そのうつりかわりのまち/\なことわ、次のようである。 但し、「で」と合わせれば、指定の助動詞のようになるが、「で」を除けば、独立の「ある」と…

2009-05-04

■ [役割語]野武士でござる(小栗虫太郎) ところで、おそらく読者諸君は誤解されることと思うが、私はいま、この人物に武家言葉を使わしている。しかしそれは、エチオピアにおいては、けっして不自然ではない。大名あり、槍持、鉄砲、挟み箱をつらねて行列もす…

2009-05-03

■ 高橋顕志氏の言語地図 http://kenz.linguistic-atlas.org/index.html中国・四国言語地図 1993 http://kenz.linguistic-atlas.org/chus/chus/93100.htm1 話者の性別2 話者の生年3 ○○さんゲ(の家)4 うそバー(ばかり)言う5 イラチ(短気な人)6…

2009-05-02

■ [表記史]堤中納言物語・虫めづる姫君 かなはまだ書き給はざりければ、かたかんなに「ちぎりあらばよき極楽にゆきあはむまつはれにくし虫の姿は」福地の園にとある、右馬助見給ひて、いとめづらかにさまことなる文かなと思ひて 阪倉篤義「平がな用法の歴史…

2009-05-01

■ [方言意識史]「大阪弁の持つ粘液性」(松本清張) 関西の人が来ているとみえて、大阪弁の持つ粘液性の話し方がそのいらだちを掻き立てるようだった 松本清張「遭難」?1末尾 『黒い画集』*1ツイートする *1:昭和33年9月から35年6月まで週刊朝日に連載

2009-04-30

■ 書生語(当世書生気質) 作者曰く、須河の言語ハ如何なる地方の言語なるかと不審をいだく人もあるべし。こは何處の方言と定まりたるものにあらず、書生社會に行はるゝ駁雜なる轉訛言語と思ふべし。盖し書生中には上方の生にありながら態々土佐方言などを眞…

2009-04-29

■ 九州 トキニ貴公の本国は何所だ。九州らしく考えるが」 男「ハイお尋ねに預かりましてお答え中すも恥入ますがお察しに預かる如く大分県の者であります」旦那様のお詞も九州らしゅう伺いますがモシヤ左様で御座りませんか」 胤員「オオいかにも俺も九州じゃ…

2009-04-28

■ [外国人の日本語など]森繁久彌 「アー、また来いよ、また来い」と言ったのは中国人です。そのくらいおおまかですね、あすこの連中は。「また来いよ。また来るイイ」なんて。だから、ちょっとね、我々と大きさが違うと感じましたネ。 森繁久彌?86才芸談義聞…

2009-04-27

■ ルビ 漢字のかなは訓讀音讀どちらにしていゝか他のものに分らない事が多いからつけて下さい夫でないと却つてあなたの神經にさわる事が出來ます尤も社にはルビ付の活字があるからワウオフだとか普通の人に區別の出來にくいものはいゝ加減につけて置くと活版…

2009-04-26

■ 漱石のルビ校正 校正に付ては今朝申上候通りなれど御參考迄に大體の御注意を致候 一 大體新聞切拔を信用する事(是はルビ付の活字あるのみならず。小生自身眼を通して特殊の場合には特殊のカナを付けた積故也) 二 誰の眼にも間違と見ゆるは構ハズ御訂正の事…

2009-04-25

■ 英語の漢語 「シエクスピヤ」の墓碑の石摺の寫眞を見せて、こりや何だい君、英語の漢語だね、僕には讀めないといつた。 夏目漱石「倫敦消息」ツイートする

2009-04-24

■ ジョンソンの字引 「ジヨンソン」の字引には「オートミール」…蘇國にては人が食ひ英國にては馬が食ふものなりとある。然し今の英國人としては朝食に之を用いるのが別段例外でもない様だ。英人が馬に近くなつたんだらう。 夏目漱石「倫敦消息」 有名な話だ…

2009-04-23

■ [方言意識史]上方弁は口馴れませんから、矢張り東京弁で 市助酒(三笑亭可楽*1) 是れは大阪の落語《はなし》でございますが手前は東京の事に直してやって居ります。今回は筋を原作の儘で申上げますが、上方辯は口馴れませんから、矢張り東京辯で御免を蒙…

2009-04-22

■ 四声(徂徠『韻槩』等) 音韻均呼。無有低昂。謂之平聲。韻昂於音。謂之上聲。韻低於音。名之去聲。韻尾迫断。名之入聲。 異文(唐韻指迷) 音韻均呼。無低昂。謂之平聲。韻昂於音。謂之上聲。韻低於音。謂之去聲。韻尾迫断。謂之入聲。 ツイートする

2009-04-21

■ 四声(元和韻譜) 平聲哀而安,上聲厲而舉,去聲清而遠,入聲直而促.引用 玉篇巻末「四聲五音九弄反紐圖序」徐銑「詞苑叢談」韻鏡開奩六声音対磨光韻鏡本朝文鑑提綱 沈氏が四声韻譜に、平聲者|衷而《たゞしうして》安,上聲者|勵而《はげしくして》舉,去…

2009-04-20

■ 四声(康煕字典等) 平聲平道莫低昂,上聲高呼猛烈強,去聲分明哀遠道,入聲短促急收藏ツイートする

2009-04-19

■ [漢語]血 血屬 一門血親血叔血泊裡 ちみどろの中から血淋々 ちみどろ血性 をとこぎ血光災 劍難がある血口子 金瓶梅 尖指甲〓すること 兩道~~~」血の出るほどつめる血海 ~~也似干保命 いのちがけのかかりあひ血路 殺開條~~ 命かけの道を切ひらいた …

2009-04-18

■ [漢語]「漢語通」(安愚楽鍋) おたげへに漢語通に因循家だとか、旧弊家だとかいはれるのだから、大きにりうかうにおくれてきやしたが、にはかにざんぎりにもなられず、洋ふくのさんだんもできねへから、半髪あたまをたゝかれてゐるのだが、じつにわうらい…

2009-04-17

■ [言文一致]「言文一致と敬語」 例へば「云々です」「云々であります」「云々でござります」のたぐひは、すべて私交的の敬語に傾いて、之を其のまま文章にすれば、何うも敬語に過ぎたやうに感ずる、それかと言ツて、「云々だ」と言ひ放てば、独語的、すなわ…

2009-04-16

■ [文体]談話体・演説体 今日の口語にも談話体の外に、演説の体もある。論文の体もある。小説の体もある。紀行、叙事其々の体があって、自然の傾向は、言文一致会の談話体一点張といふことを許しては居らぬ。 国学院雑誌 明治三四年五月二〇日号 森岡健二「…

2009-04-15

■ [文体][言文一致]談話体・演説体 今日の言文一致体の中には、談話体を用ゐるものも往々あるが、この体には、口語の各体の中の短所をのみ具へて居る様に思はるる。「あります」とか「御座ります」とか「なければなりません」とかいふ嫌なる敬語沢山の体は冗…

2009-04-14

■ [言文一致]ござんす・ござります 細川君の「御座んす」フルベツキ君の「御座ります」等は其用所甚多く文章としては見苦しきの憾なきにあらざれども是則ち其人の僻を真写したるものなれば敢えてとがむるに足らず 唯後進演説者をして其長をとり短を捨つる亀…

2009-04-13

■ [言文一致]ぢゃ 我輩ノ遺憾トスル所唯一点アリ加藤先生ノ演説中ニ「ぢゃ」トイフ事度々見ユ例ヘハ「道徳ハ社会ノ維持ト保存トノ為メニ出来タモノヂャ」ノ如シ此ハ筆記ノ儘トハ思ハレヌナリ(東洋学芸雑誌五九号) 森岡健二「言文一致体成立試論」ツイートする

2009-04-12

■ [方言意識史]織田作之助 今日大阪の言葉は文学や演劇や映画の中で、三番手のぼうっとした間抜けた男を表現する手段として嘲笑的に使われている。ひとつにはつねに阿呆の相棒を必要とする落語や漫才が大阪弁の品位を下げてしまったこともその原因であろう。…

2009-04-11

■ 訳文 訳文に字義・文理・句法・文勢と云ことあり 字義と云は一字一字の意なり 字を積んて句となし句を積て文になしたるものゆへ字義が本なり 薬一味一味の能を知らざれば薬方配剤はならぬ如くなり 材木一本一本の大小長短使ひ様を知らざれば家は立られぬ如…

2009-04-10

■ [言語意識史][漢語]このごろの無学な連中は無茶な言葉を作りよる。【惜敗】 漢学者だった私の父*1は、生前この「惜敗」という言葉を見かけるたびに、「敗ケヲ惜シムとは一体何んのことや。このごろの無学な連中は無茶な言葉を作りよる」 と苦笑いしていた…