国語史資料の連関

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2009-05-06

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 「です」わ、「でござります」が、いろいろに遷りかわつて、段々と約まつて出来た語で、そのうつりかわりのまち/\なことわ、次のようである。

 但し、「で」と合わせれば、指定の助動詞のようになるが、「で」を除けば、独立の「ある」と云う意味の敬譲動詞であるのが、此中に多い。

  でござります でごあります でございます でござりやす

  でござあす土佐 でござあんす越中婦負郡 でございす信濃松代

  でござんす でござえす でごぜす

  でごあす でこわす でがあす

  でごあんす羽前西村山郡 でこわんす でがいます安藝安佐郡

  でごいす青森 でげいす でごつす

  でごんす  でこす でがんす

  でがす でげす であんす常陸、羽前西村山郡、出雲川簸川郡

  でやんす羽前西村山郡  であす陸中 ぢやんす日向宮崎

  ぢやす備前岡山 だつす羽前西村山郡  でんす です

 段々、末の方になると、打消を形作らせられぬ。「です」と云つても、「でせぬ」と云われぬ。又「ですれば」ともつかわれぬ。

  江戸、新吉原、遊女詞、おざりいす ざいます ざます ざんす

東京で、「そうなりましてす、」(「待ちましてした」十二時頃でございましてしょう」)仙台で「そうすか」(左樣でござりしてござりす)など云うわ、「す」の一音になったのである。

「です」わ、「であります」の約まつたものであると云う説もあるが、そうでわない。前に挙げたいろ/\な語に、「ご」が」げ」あ」や」の音が伴つて居るので、「ござります」の姿が認められて、それの遷りかわったのであることが分る。

 右の「でござります」から「です」までわ、今でも、地方に因り、身分、仲間に因つて、いろ/\につかいわけられて居るが、「でございます」と「です」との外わ用いぬがよい。

(『口語法別記』pp.296-297*1

吉川泰雄『近代語誌』pp.30-31