国語史資料の連関

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2011-12-01から1ヶ月間の記事一覧

2011-12-31

■ 八坂瓊《やさかに》の坂は尺なり(夏山雑談) ○八坂瓊「八坂瓊《やさかに》」の「坂」は「尺」なり。「尺」の訓「さか」なり。必す尺の玉にあらざれども、大玉といはんがためなりと聞し。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作者: 日本随筆大成編輯部出版社/メ…

2011-12-30

■ 文字につきての仮名(夏山雑談) O「風雨」を「あめかぜ」とよむこと神代の巻に、「風雨」と云字に「かぜあめ」とかなつけたるは、文字につきてのかななり。「風雨」とありても「あめかぜ」とよむべし。我國の語に「かぜあめ」とはいはす。「あめかぜ」と云…

2011-12-29

■ 物の初を「しょはん」といふこと(夏山雑談) ○物の初を「しよはん」といふこと物の初を「しよはん」と云人あり。いかなる詞にやと思ひしに、神代の巻をみるに、一書《あるふみ》の説に、「天地初判」の四字を「あめつちはじまる」と讀なり。されぱ物のはじ…

2011-12-28

■ [語源説]峠(夏山雑談) ○山の「たうげ」は「手向」の轉訓なり山の「たうげ」は「手向」の轉訓なり。「手向」を「たうげ」と訓するは、「日向《ひむけ》」を「ひうが」といへるが如し。「たうげ」は上り下りの山のさかひにて、國も多はこゝにてさかへぱ、旅…

2011-12-27

■ ○上下・下上(夏山雑談) ○上加茂下鴨上加茂下鴨の社を上下の社とは云はず。下上の社と倒に申すがならひなり。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作者: 日本随筆大成編輯部出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 1995/02メディア: 単行本この商品を含むブログを…

2011-12-26

■ ○乎古止點、假名點(夏山雑談) ○乎古止點、假名點讀書の點に乎古止點と云ふものは、古代のものにて、不便利なるやうなれども學者に益あるべし。後世の假名の點は便利なれども學者に損あり。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作者: 日本随筆大成編輯部出版社/…

2011-12-25

■ [言語教育]手習いの町師匠(飛鳥川) 昔手習の町師匠も少く、数へる程ならではなし。今は一町に二三人づゝも在り、子供への教へ方あるか。幼少にても見事に書也。手跡の事は広沢得と明らめ世の中へ弘めし也。是中古の筆道の祖と思ふ。学文も勝て筆道の事は…

2011-12-24

■ [言語教育]むかしの手習讀書の師(夏山雑談) むかしは兒童を寺院へつかはし、僧を頼みて手習物讀などをさせしなり。今も邊土はかくの如し。今世商家にて手習の師をする所を寺といひ、子どもを寺子と云ふも此風なり。 日本随筆大成〈第2期 第20巻〉 作者: …

2011-12-23

■ 輸出日本語 考字老 醤油が西洋へ輸出されるので、其の名Soyは既に舊版のC.O.D.にも採られてゐる。イギリス語としてイギリスの辭書に採られてゐる日本語は恐らくは此れ一つであらうか。 支那へは日本の書物が飜譯されるに伴れて日本譯の學術語などは其のま…

2011-12-22

■ [言葉とがめ]新らしい言葉二つ三つ 坪内逍遙 新らしい人の書いたものを讀むと、一ペイジに一つ位は其の人一家の新造語が出て來る。 東京の一部で使つてゐる「カツチリ」と「ガツシリ」と上方語の「ガツチリ」とを三つ混同したものもある。「しつッこたらし…

2011-12-21

■ 「にか、をか」 昔、江戸城でお能のあった時、将軍秀忠が楽屋へはひって来て、金春、金春とぢかに呼んだ。金春大太夫が進み出てかしこまった。将軍は、にか、をか、と聞いた。ににござりまする、と大太夫は答へた。将軍はうなづいて奥へ入った。その場にゐ…

2011-12-20

■ [表記意識]臨模するばかりにては益すくなし(授業編) いまだ年少の人、墨本ばかりを臨摸するも、心の勵みなく退屈ならば、當今の書家の中へ手本を請ひ、清書をなほしもらふ事、和樣を習ふ如くするもよし。かくしてのち、前に云へる如く、華人の其跡か、また…

2011-12-19

■ [表記意識]唐樣を學ぶべし(授業編) さて學事にたずさわる人ならば、世にいふ唐樣を學ぶべし。唐樣を學ぶになりては、漢土人の眞跡を學ぶべし。但し、漢土人のよき眞跡、得やすからず。よき眞跡得がたき時は、唐刻のよろしき帖を求めて臨摸すべし。唐刻の石…

2011-12-18

■ [表記意識]伊呂波を教ゆべし(授業編) 其の他、農・買の俗事に事しげき、珠には武家の、仕官吏職にもあずかりぬべき人の子どもには、やはりありふれたる假名の「伊呂波」を教ゆべし。それに次ぎては、假名まじりの手本より、日用に便りある書札・手紙の文言…

2011-12-17

■ [表記意識][言語教育]平仮名と片仮名の先習(授業編) 我が邦小兒の手習ひには、まづ「伊呂波」を習はす事、都鄙上下一般なり。げにも國字の字母にして、これをだに書き得れば、たとへふつつかなりとも、用事を弁ずべし。其の上に畫すくなくして、小兒の手ほ…

2011-12-16

■ [方言意識史][役割語]明治の役割語(続)(土子笑面「話術新論」) 唯雅俗男女老若等の区別のみならず場合によりては地方の語をも夫々使ひ分るをよしとす。たとへば京都の人なら「サカへ」「ソウドス」「アンジヤウ」「マ、ドーエ」などいひ鹿児島の人なら「…

2011-12-15

■ [外国人の日本語など][役割語]明治の役割語(土子笑面「話術新論」) 上来述ぶるが如く大体話の地は平語を以てすべしといへども話中の人の言語は必しも平語と限ることあたはず。素と人の言語は其の人物をあらはすに最も密着の関係を有するものなれば其の人…

2011-12-14

■ [方言意識史][ここから広がった]ゴリョンハン 「テレビでいつも耳ざわりなのはゴリョンハンです。何もそんないいにくいこといわんでもええのに。ゴリョンハンは谷崎潤一郎の『細雪』が元凶です。大阪ことばをあまりよく知らんあの人が、奥さんとかに筆を入…

2011-12-13

■ [方言意識史]その地方の方言で(三好十郎) 1 各人物の言葉は、その地方の方言でやること。(中略)3 篇中、慰問隊のプログラムは臨機に変える事が出来る。(中略)なるべくその地方の特色のよく出たものを、充分に稽古してやる事が必要である。(三好十郎「…

2011-12-12

■ 唐音を稽古(鎌倉諸芸袖日記) 世はさま/゛\の内に、難波の北に大灘屋の入齋、あとめ八右衛門といへるは、年いまだ三十一二歳、いつの頃よりか唐音を稽古し、よき若衆を見ては好童子《はうとんつう》、よき女を見ては好女子《はうにうつう》、さんけんの…

2011-12-11

■ [方言意識史]鹿児島弁人工説 鹿児島弁はわかりにくい。島津の殿様が外敵の侵攻を防ぐためにわざわざことばをわかりにくくしたといわれるほどだ。『九州人国記』p.614 ツイートする

2011-12-10

■ [方言意識史]九州弁 九州弁にシンボライズされる線の太さ、単純さ。映画やテレビなどの登場人物でも、九州弁をしゃべるのはたいてい、男っぽくて、単純で、人がよくって-というのが多い(笑い)。『九州人国記』p.831 ツイートする

2011-12-09

■ [表記意識]大町桂月・平仮名の「し」と長音符号 引音に縱線(ー)を用ゐ。之を動詞には用ゐず。例へば、用意を『よーい』とし、養ふは、『やしのー』とせずして、『やしのう』とするか如し。二也。(中略) 第二の縱線を用ゐることは、氣にくはぬ人もあるべ…

2011-12-08

■ 俗言・古言(歌学提要) 古への俗言は、今の世の古言なり。今の俗言は、後の世の古言なり。 ツイートする