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2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧

2007-04-30

■ [近代語][江戸語]江戸文学の江戸語 三田村鳶魚「江戸の文学」 文語より口語へ それから近世文学の大きな特徴は、上方文学、江戸文学のいずれでありましても、文語から口語に移ってゆく傾向を持っており、その口語なるものが、また一種の文章をなしておりま…

2007-04-29

■ [近代語][江戸語]江戸語の変遷 小川顕道?『塵塚談?』文化十一年 我等十四歳の頃は御家人二三拾俵高の妻女をかみ様と皆人称せり。まして商人は富家にてもかみ様とよび、子どもが親兄へは、とと様かか様あに様あね様といひけり。然るに二三十年以来、同心渡…

2007-04-28

■ [近代語][江戸語]人情本で江戸語を覚える 為永春水『処女七種』(一八三六)第4章 京都の女中の詞をまねて記したきことなれども、江戸の乙女によみ易からず。また京大坂の娘御方には、その詞の似せ損ひたるをよみづらく笑ひ給はん。近来やつがれ綴りし人情…

2007-04-27

■ [位相]婦人語 中江兆民「婦人改良の一策」明治二一年「国民之友」第二五号 七・六 看よ世界万国、男子日用の言葉と、女人日用の言葉と相懸隔すること、我が日本国ほど甚しきはあらず、おやまあといふ語は、男子は使はぬなり、じれったいといふ語は、男子は…

2007-04-26

■ [位相]婦人語 明治四十年(一九〇七)十一月の雑誌「趣味」竹内久一「東京婦人の通用語」 今の若い婦人は上流も中流もおしなべて、一種の妙な言葉を使つて居るではないか。自分の事をアタイだの、また否《いや》だと云ふ事を否《いや》ヨだの、夫《そ》れか…

2007-04-25

■ [位相]若松賎子訳・バーネット「小公子」 メレの話し方、全くの田舎言葉でもないが、やや。 アノ奥様ア、此猫は御殿の奥の取締がよこしたんでございますよ、マア何んちう深切な人でんすか、そうして奥様がおいんなはるつて、何んていことなくみんな仕度を…

2007-04-24

■ [漢語]珍粉漢語 内田魯庵「貘の舌」大正九年(一九二○)、「読売新聞」に連載 漢学が其頃の知識標準であった。革命の動揺がマダ静まらない殺伐な時代には能く釣合っていたので、役人は威厳を保つ為めに、書生は豪放嘉落を衒うために盛んに漢語を使ったもんだ…

2007-04-23

■ [方言意識史]巡査と鹿児島語 「東京経済雑誌」明治30.7.3 三四年前は、巡査と云へば鹿児島県人でクハ/\と云はざれば巾が利かず、江戸ッ子にても巡査を拝命すれば、態々鹿児島語を真似る程なりしが、近頃殆ど此の事止みて、全く江戸ッ子のみとなりしが如…

2007-04-22

■ [方言意識史]薩摩言葉 三宅雪嶺『同時代史』「風俗習慣」 薩を憎む者も少からざれど、明治十年の戦争まで薩人が日本に於ける優勝者にして、当世の志士なる者は鹿児島に赴き、帰りて誇り顔に土産話し、言語動作を薩人に似せて得たりとせり。(鹿児島より帰…

2007-04-21

■ [方言意識史]不馴れの薩摩弁を濫発 田中光顕『維新風雲回顧録』 馬場の播磨屋というのに宿をとった。薩摩弁を使ったら、薩摩人と思いこむに違いない、長州土州の浪人者と感づかれては危険であるというので、私は、不馴れの薩摩弁を濫発した。 だが、もとよ…

2007-04-20

■ [言語意識史][漢語]漢語図解をひねくりまわす 假名垣魯文『西洋道中膝栗毛』 北「コウコウ弥次さん。あんまり人の事は、言はねへもんだぜ。此頃、漢語図解なんぞをひねくりまはして、人参具足だの。」弥「ヲットまったり。因循姑息の事だらう。」 (初編上)…

2007-04-19

■ [言語意識史][漢語]漢語の増加 津田左右吉「子どもの時のおもひで」 近所の人たちが話をするのに、漢語めいたことばのまじつてゐるのを聞くやうにもなつた。(略) 懇親会とか送別会とかいふやうな、新しく造られたものが多かつた。近ごろこの辺のものまで何…

2007-04-18

■ [方言意識史]薩摩言葉が東京で 谷崎潤一郎「幼少時代」 日清戦争から此方、急に美少年趣味が盛んになって、「ニセさん」だの「ヨカチゴ」だのと云ふ薩摩言葉が、東京でも用ひられるやうになつてゐた。 大浜徹也『明治の墓標──庶民のみた日清・日露戦争』河…

2007-04-17

■ [方言意識史][位相]坪内逍遙訳・シェークスピア「ウィンザーの陽気な女房」 「ウィンザーの陽気な女房」は、役割語的な言葉遣いに富む。 シャロー 地方の治安裁判所判事。 「ごわす」「さうぢゃ」スレンダー (名はエーブラハム)、シャローの従弟。 「あ…

2007-04-16

■ [方言意識史]鹿児島言葉、とんと分からぬ 渋沢栄一『雨夜譚』岩波文庫p.72 全体この折田(要蔵)という人は薩藩ではさまで身分のよい人ではないけれども、幕府からの御用というのでにわかにその宿所に紫の幕を張って、容体ぶるというような風であったが、…

2007-04-15

■ [方言意識史]奥州言葉と京言葉 先年聞たるは仙台侯の国元にて生長せられし息女、奥州言葉なれば、都下へ出て他に嫁せられしとき、如何あらんとて、父侯京の婦女を召下して息女につけて、言葉づかひを聞習はせられしが、月日を経る中、いつか京女仙台言葉に…

2007-04-14

■ [方言意識史]坪内逍遙、シェークスピア訳の薩摩弁使用 春の屋大人?と逍遙博士 野村喬? 少年の日に、空色の装禎をした袖珍版の沙翁全集に親しんだわたしは、「ウインザーの陽気な女房?」などで田舎者があられもなき薩摩弁の方言で立ち現われるのに、イギリ…

2007-04-13

■ [方言意識史]井上馨「鳥羽伏見役前後」 長州言葉と薩摩言葉で話のよく了解らなかったこともあるが、兔に角大久保一蔵?、伊知地壮之丞?などと会談した。http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/773203/115 末松謙澄編『維新風雲録』 奈良本辰也編『現代日本記…

2007-04-12

■ [位相]福沢諭吉「旧藩情」 上士の風は正雅(せいが)にして迂闊(うかつ)、下士の風は俚賤(りせん)にして活溌(かっぱつ)なる者というべし。その風俗を異(こと)にするの証は、言語のなまりまでも相同じからざるものあり。今、旧中津藩地士農商の言語…

2007-04-11

■ [言語意識史]「僕が面白うない」(二葉亭四迷「平凡」三十) 「そ、そ、その僕が面白うない。君僕というのは同輩或は同輩以下に対(むこ)うて言う言葉で、尊長者に対(むこ)うて言うべき言葉でない、そんな事も注意して、僕といわずに私(わたくし)とい…

2007-04-10

■ [言語意識史]「常言を俗と賎しめて執らざるは」(香川景樹「歌学提要」) 古言をのみ雅なりとし、常言を俗と賎しめて執らざるは、臭体也とておのを厭ふに似たり。厭へども身を捨る事をえず。賎しめても俗をまぬがれがたし。 板坂元『日本の古典4町人文化…

2007-04-09

■ [方言意識史]関西弁の金貸し ベニスの商人のシャイロックについて。 ネチネチと悪がらみするように吐露していくこの件り、著者にはどうも東京弁の標準語でいくよりも、あの関西弁の上方人金貸しという映像でひそかに描いてみる方が、はるかにぴったりくる…

2007-04-08

■ [言語意識史]べらんめえ言葉 露西亜の下層社会の語を訳すのに、日本のべらんめえ言葉を以てしたのは、甚適当なことである。 『青春の和辻哲郎』講談社現代新書(p128)による谷崎潤一郎が和辻の脚本「夜の宿」を評した文(『新思潮』第5号) ツイートする

2007-04-07

■ [言語意識史]太宰治「新ハムレット」 オフ。「すまいとばし思うて?」 レヤ。「なんだい、それあ。へんな言葉だ。いやになるね。」 オフ。「だって、坪内さまが、――」 レヤ。「ああ、そうか。坪内さんも、東洋一の大学者だが、少し言葉に凝り過ぎる。すま…

2007-04-06

■ [言語意識史]武家言葉で嚇す(三遊亭円朝「真景累ヶ淵」) 書物を遣らして見ると帳面ぐらいはつけ、算盤(そろばん)も遣り調法でべんちゃら[#「べんちゃら」に傍点]の男で、百姓を武家言葉で嚇(おど)しますから用が足りる、http://www.aozora.gr.jp/…

2007-04-05

■ [位相]服部四郎の老人語 「アイヌ語における年長者層特殊語」(『民族学研究』二一巻三号 日本民族学会 昭和三十二年)『日本の言語学 第一巻』大修館書店所収 世代の成長とともに移動して行く年齢的言語差のほかに、その言語集団としては固定していて、各…

2007-04-04

■ [言語意識史]「道化すぎたる詞」(松永貞徳『俳諧諸学抄*1』) 俗語苦しからずとは申しながら、あまり道化すぎたる詞は如何 森田良行「俗語 新語 老人語」(『国文学 解釋と鑑賞』198707「はなしことばとその周辺」)ツイートする *1:未詳。斎藤徳元『俳諧…

2007-04-03

■ [方言意識史]三遊亭円朝「真景累ヶ淵」 上方の人でござりますが、此の人は長屋中でも狡猾者(こうかつもの)の大慾張(だいよくばり)と云うくらいの人、[……]旦那はんが居やはらんければ、引取られぬでござりましょうかhttp://www.aozora.gr.jp/cards/0009…

2007-04-02

■ [漢語]「法典の文字が人民に分らぬ」(勝海舟『氷川清話』) 昔し幕府が、種々の規則を出す時には、人民に分り易い文字を、成るべく用ひるやうにして、掛りの人は、始終この事に心掛けて居た。然るに、今はその反対で、成るべく六かしい文字を用ひるやうに…

2007-04-01

■ カイヅ・ケイヅ(幸田露伴「幻談」) ケイヅと申しますと、私が江戸訛(なま)りを言ふものとお思ひになる方もありませうが、今は皆様カイヅ/\とおっしゃいますが、カイヅは訛りで、ケイヅが本当です。系図を言へば鯛(たい)の中(うち)、というので、…