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2007-04-28

■ [近代語][江戸語]人情本で江戸語を覚える

為永春水『処女七種』(一八三六)第4章

京都の女中の詞をまねて記したきことなれども、江戸の乙女によみ易からず。また京大坂の娘御方には、その詞の似せ損ひたるをよみづらく笑ひ給はん。近来やつがれ綴りし人情本にて、当世江戸詞を諸国の娘御達も大方よみ覚え給ひし由なれば、拙き筆に他国の方言を記さず。ただ人情の趣は都鄙遠近の変りなく、別して恋情の等しきこと、漢も和も違はぬ色の衢と知るべし。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1018474/37

 

京都《かみがた》の女中《ぢょちう》の詞《ことば》を真似《まね》てしるし度《たき》ことなれども、江戸の乙女《をとめ》によみやすからず。また京大坂《かみがた》の娘御《むすめご》方には、その詞《ことば》の似せ損いたるをよみづらくわらひ給はん。近来《ちかごろ》僕《やつがれ》が綴《つゞ》りし人情本《ちうほん》にて、当世《とうせい》の江戸詞《  ことば》を諸国《しょこく》の娘御達《むすめごたち》も大方よみ覚《おぼ》へたまひし由《よし》なれば、拙《つた》なき筆《ふで》に他国《たこく》の方言《ことば》をしるさず

https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/200004069/viewer/40


暉峻康隆「標準語のルーツ」(『耳ぶくろ』文春文庫)『本』83年1月

杉本つとむ『東京語の歴史』 p.200