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2007-04-05

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アイヌ語における年長者層特殊語」(『民族学研究』二一巻三号 日本民族学昭和三十二年

日本の言語学 第一巻』大修館書店所収

世代の成長とともに移動して行く年齢的言語差のほかに、その言語集団としては固定していて、各世代がそこを通り過ぎる、と表現し得るような年齢的言語差もあり得ると考えられる。たとえば、──これは仮定であるが──老人たちは「そうじゃ」というのに対し中・青・少年層の人々は「そうだ」というが、中年層の人々も老人となるとともに「そうじゃ」というようになり、それより若い世代の人々も次々に老人になるとともに「そうじゃ」というようになって、その言語共同体の「そうじゃ」という老人言葉はいつまでも残ると同時に、若い人々はいつも「そうだ」という、というようなのがその例である。この種の言語差は音韻体系文法体系よりも語彙に多く現れるであろう。なぜなら、新しい単語の習得は比較的楽だが、違った音韻体系文法体系の習得は成人後は困難だからである。文法の面に現れるとしても、「だ」を「じゃ」にいいかえる、というような、一つの単語或いは形態素を他のそれと取り換えるような語彙的処理ですむ面に多く現れるであろうと考えられる。この種の年齢的言語差の著しい例を、私はアイヌ語において見出したと思う。