2007-07-15
■ [方言意識史]三田村鳶魚「ヂヤ」だらけ(『時代小説評判記』)
「ヂヤ」だらけ
この人の書いたものは、他の人のものに翫べて、耳障りになるような言葉や、目障りになるようた文字が少いのでまことに心持よく読める。大衆小説というものは、変な造語が沢山あるために、何だかわからないようなことが多いのみならず、聞いても聞き苦しいし、読んでも解らないことが多い。それが一般の型になっているように思われますが、この人のはそういうことがないといってもいいほどに出来ている。それなら結構なものであるかというと、大体において、結構でないこと夥しい。それは赤穂の人の言葉を写すところに、むやみに「ぢや」が出てくる。赤穂は蛇の多い所とも思われぬのに、「ぢや」だらけだ。殊に「ぢやらう」などと言うような、九州辺りで聞きそうな言葉が出てきます。