2011-04-04
■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』おほむね下(9)
一 三こゑ(註一) 井・筆・などよむこゑを、ゆきごゑといふ。もろこしごゑの平なり。(二)
野・船・などよむ聲をたちごゑといふ、もろこしごゑの去たり(三)。日・花・などよむこゑをかへりごゑといふ、上なり。(四)
一 かさねことば おなじことばをかさぬるなり。重名(五)とは山々・浦々・などをいふ。重裝(六)とは「きく/\」「たどる/\」「ありとある」「くるひにくるひ」などをいふ。
一 火水の詞 世にいふよき(善)はあしき(惡)のうら、しろき(白》はくろき(黒)のうらといふ詞也。又夏冬の詞とも。
一 内外の詞 世にいふ有情・非情・(七)なり。内とは有情をいふ。外とは非情をいふ。又非情なりとも有情になしていふ時は只内なり。師論深き理あり。こゝにいひつくしがたし。
一 裏表の詞 裏とはみづからの上なり。表とは人・物・事・のうへなり。但人・物・事・のうへなりともしばらくそれが心になりていはゞ只裏なり。師論しるしづくしがたし
一 目やすのやう(八).
■鬮圏躙(本書太字)條なり。
一(本書大活字)屬・家・・倫。身・隊・の名なり。
○(本書括弧内、口同とす)もじのかたはらにつけたるは里同、又はさながらめぐらす(九)脚也。
○(本書拮弧内) もじのあひだにつけたるは、里言を加て心うべき所也。
一 なりもじ(一〇) ら。り・る・れ,・ろ・のいつゝなり。
三作例 正例をあとゝいひ、變例をさしおきといひ、疑例をうたがひともすつるあと(二)ともいふ。
一 神しるし 神は能(三)なり、しるしは所(三)なり。
(二) ゐ・ふで・等は行聲といふ。平聲に當る。
(三) の・ふね・等は立聲といふ。去聲に當る。
(四) ひ・はな・等は返聲といふ。上聲に當る。
(五) かさねな。
(六) かさねよそひ、動詞を重ねたもの。
(七) 有情は、人・鳥・獸・など、 非情は、草・木・石・など。
(八) 目印。本書では、括弧内の通り、改めて分りやすくした。
(九) そのまゝ、上又は下へまはす。
(一一) 取ることの出來ない例。
(一二) 能動。
安永二年六月
吉川彦富
井上義胤 同識