2011-04-03
■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』おほむね下(8)
一 六運(一) 開闢より光仁天皇の御世までをおしなべて上つよといふ。其後より花山院御世まで二百五年を中むかしといふ。後白河院御世まで百七十二年を中ごろといふ。四條院御世まで八十四年を近むかしといふ。後花園院御世まで二百二十二年ををとつよといふ。其のちを今の世とす。
もと・すゑ 世にいふ上句・下句・なり。
かうぶり 世にいふまくら詞なり。
いこと・なゝこと(二) 世にいふ五もじ・なゝもじ。也、一うたにとりて、 上のいこと・もとの七こと・中のいこと・中のなゝこと・末の七こと・といひつけたり。
よみづめ歌 の末の七ことのをはりをいふ。つめとも。
中・末 中は詞の中なり。末は詞の末也。
かたひゞき 世に[めくらばね](三)などいふ。けん・らん・なん・等にあり。
なびきづめ(四) 歌の[よみづめ]うちあはずしてなびきたるをいふ。
かへりづめ 歌の[よみづめ]より(五)上にかへりてうちあふをいふ。
引あひ 世にいふ[もじあまり]又反切等也、師論ひきあひのさだめ(七)にくはし。
かへすことば(八) 不倫のあゆひ又うたがひの挿頭・脚結。などにうちあひて心かへりたるをいふ。
註 (一) 成章別著に、六運略圖といふのが寫本で傳はつて居る。
(二) 五言・七言。
(三) 疑の係がないのに、ん・けん・らん・など撥ねる語で結ぶこと。
(四) その係が無いのに連體にしたのをいふ。
(五) 思ひきや……とはのやうに上にかへつて結ぶものを指す。
(六) 係のてにをは。
(七) 別著があつたのであらう。