2007-11-20
■連声とてよきことば(かたこと)28
一前《まへ》*1も云る。中/\を。なっかなか。なかなっか
右《みぎ》いつゝのこと葉を。かやうにつめていふこと如何といふ人も侍り 但うへより云つゞけ。又いきほひかゝりていふ時《とき》は。くるしからじといへども。いはぬにはしかじ。殊《こと》に物《もの》に書《かき》つくべきことにあらず。頃《このころ》ある人の。「べによりあかきたんだ今《いま》」。「雲《くも》や霞《かすみ》のたつた今」などゝいふ狂句したるをきゝ侍り。いかゞ侍らん。
又「仁王経《にんわうきゃう》」を。「にんなうぎゃう」とよみ「本院」を「ほんにん」。「文屋康秀」を「ふんにゃ」などゝいふは。連声《れんじゃう》とてよきことばなり。
又|坂東《ばんとう》こと葉にや。ひたすら無理《むり》につめ。又|詰《つめ》られぬ所《ところ》にては。この字などをそへていふやうなるはいかゞ侍らん。ある人の奴婢《ぬび》をしかるとて。「がっきめ」といへりしを。「餓鬼《がき》とこそいふべけれ」と。老師《らうし》は宣《のたま》へり
遠藤邦基「連声の増価意識」