国語史資料の連関

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2013-01-11

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滑稽なる創傷 ドクトル・サーチライト

あなたの国、目下戦争ある。負傷の名前知らぬ宜しくない。私教えることある。聞く宜しい。

イよりロへすなわち目から鼻へ抜けた傷が俗にいう賢明貫通傷。

ハより二へすなわち口から尻穴へ抜けた傷は食道貫通銃創。

ホよりへへすなわち耳から脳天へ抜けたのがすなわち腹立ちまぎれに進撃して受ける肝癪玉破裂傷、これはなかなか重傷のようだが命には別条がない。村夫子がよく受ける傷だ。

トよりチへ抜けた傷。これは最も重いので致命傷とも言うべきものだ。敵から発した弾丸がズシンと胸に当たるが最期、貫通もしないでチャンとその弾丸がそこに止まりムシャムシャムシャとする。時とするとこれがへ印へ抜ける事もあるがこの抜ける奴は貫通傷で命に別条はない。この傷は学問上、前胸盲管銃傷というのである。

りよりヌすなわち右の耳から左へ、もしくは左耳から右へ抜けた傷。これは籠耳貫通銃創といって幾度食らっても少しも答えない傷だ。

ルよりヲを経てワに、もしくはカよりヨに抜けた傷は梅毒症全部貫通傷という。おもに紅裙隊進撃の時に受ける傷で、ある一部分を切断しないと一命にかかわることがある。皆様せっかく用心する宜しい。

 河出文庫滑稽漫画館』pp.70-71による

滑稽新聞』78号(明治37.8.5)