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2002-01-01から1年間の記事一覧

2002-07-10

■ [東雅]東雅総論(9) 我むかし海外の人のこゝに至れるに遇ひて。其言を聞き。其義を問ひし事どもありけり。我東方の言ほど。声音の少なきはなく。西方の言ほど。声音の多きはなし。中土またそれに次ぐ東南の方音は揚れり。東北の方音は濁れり。西北の方音も…

2002-07-09

■ [東雅]東雅総論(8) 我師なりし人の教へられしは。凡経書の正義の如きは。迂闊の言也と思ふ事多かり。後に説者の解釈せし所の理致。通暢なる如きは。恐らくは其本旨にあらじと云ひたまひたりき。我国古今の言の義を尋ぬるに及ぴて。思ひ合せぬる事ども少な…

2002-07-08

■ [東雅]東雅総論(7) されば我国太古の初より。今世に至るまで。五方雅俗の言。風と共に移り。俗と共に易れるのみにあらず。海外諸国の方言の如きも。また相混じぬと見えたり。凡は人の言に於ける。その云ふ所として。其義あらずといふものなし。また其義を…

2002-07-07

■ [東雅]東雅総論(6) 近世に及びては。西南洋の蕃語も。俗間に行はれしありけり。梵語の此間の語となりし事は下に見えたり。禅語の此間の俗諺となりし事は。詳に壒嚢鈔にみえけり。番語の今も世に行はれぬるは。たとへば瑠璃をビイドロといひ。毛布をトロメ…

2002-07-06

■ [東雅]東雅総論(5) それより後。仏氏の書また伝はれる。梵語の如きも。其教と共に此に行はれ。其後又禅教の来れる後。宋元代々の方言をもて我国の俗諺となりしも。亦少からず。ツイートする

2002-07-05

■ [東雅]東雅総論(4) 我国古今の言に相通じなむには。まづ其世を論ずべき事也。旧事紀 古事記 日本紀等の書にみえし太古の語言の如きも。其書撰述の代の人の云ふ所をもて記されしとみえし事もあれど。神名人名また歌詞の如きは。古よりいひ嗣しまゝなる者と…

2002-07-04

■ [東雅]東雅総論(3) 世の人いふ事あり。和語を解くには謎語《ナゾ》を解くが如し。其要訣を得ぬれば。解くべからざる者なしなどいふなり。凡天地の大なるより見ぬれぱ。我東方の如き。またこれ一方の地にてある也。されどその一方の内。また古今の間。五方…

2002-07-03

■ [東雅]東雅総論(2) 我東方の古言の如きは。幸に今先達の人の訓釈。なほ伝はれるものどもなきにあらず。 旧事紀 古事記 日本紀 姓氏録 古語拾遺 風土記等に。古語を釈せし見えたり。其余万葉集をはじめて。代々の歌詞を釈せし諸家の説。またすくなからず。…

2002-07-02

■ [東雅]東雅総論(1) 天下之言には古言あり今言あり。其古今之間に於て。又其方言あり。方言の中に亦各雅言あり俗言あり。古言とは太古より近古に至るまで。其世々の人のいひし所の語言なり。今言とは近世の人いふ所の語言なり。たゞ今五方の人の語言。各同…

2002-07-01

■ [東雅]東雅 凡例 爾雅の書 始に釈詁 釈言 釈訓あり 東方上世の言 本朝の正史にみえし所のものは 先儒の訓釈すでに備れり 後代の歌詞文辞の如きも 諸家の注解またすくなからず 此書の編は要とするところ 物名を釈するにあれば 倭名類聚紗に見えし所に拠りて…

徒然草(22)

■ [古代語][位相]徒然草(22) 何事も、古き世のみぞ慕はしき。今様は、無下にいやしくこそなりゆくめれ。かの木の道の匠の造れる、うつくしき器物も、古代の姿こそをかしと見ゆれ。 文の詞などぞ、昔の反古どもはいみじき。たゞ言ふ言葉も、口をしうこそなり…

2002-06-29

■ [古代語]徒然草(199) 横川行宣法印が申し侍りしは、「唐土は呂の国なり。律の音なし。和国は、単律の国にて、呂の音なし」と申しき。ツイートする

2002-06-28

■ [古代語][言葉とがめ]徒然草(160) 門に額懸くるを「打つ」と言ふは、よからぬにや。勘解由小路二品禅門は、「額懸くる」とのたまひき。「見物の桟敷打つ」も、よからぬにや。「平張打つ」などは、常の事なり。「桟敷構ふる」など言ふべし。「護摩焚く」と…

2002-06-27

■ [和訓栞]和訓栞大綱(166)(終) ○羅什大般涅槃経悉談章中國品を見れハ五十音とも悉談章也 [あいうえを]ハ〓〓〓〓嗚也 [かきくけこ]ハ迦鶏倶計〓也 さしすせそは遮支朱制げた也 [たちつてと]は〓知〓啼嘲也 [なにぬねの]ハ那〓奴泥〓也 [はひふへほ]ハ波〓哺…

2002-06-26

■ [和訓栞]和訓栞大綱(165) ○古史通に上古の語言のまゝに猶今も傳ハれるハ歌詞と地名とのニツ也 歌詞のこときハ後の撰述の者改め作る事を得かたき事あり 地名に至てハ異朝の歴代州縣郡國其沿同しからさるか如くにハあらす こゝをもて今によりて古を考ふるに…

2002-06-25

■ [和訓栞]和訓栞大綱(164) ○佛経は呉音儒道兩典は漢音云々此事本朝語園には延暦帝の制のよしいへり されと延暦の官符の文に須各依本業疏讀法華金光二部漢音及訓と見えたれは信するに足らす http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2562782/52ツイートする

2002-06-24

■ [和訓栞]和訓栞大綱(163) ○朝鮮の諺文はて和音五十字を彼國の人書たるを見しにイヰともに〓に作りエヱ通して〓に作りヲオ皆〓に作りたり されハ悉曇にても〓〓〓《エヲ》の三音に單複有のみにて呉音ハなし 諺文にも〓〓〓ともに一字つゝなれハヰヱオ三音は…

2002-06-23

■ [和訓栞]和訓栞大綱(162) ○譲ハ[ゆつる]を[せむる]と訓し結を解とし浮を沈むとし面ふを背くとし荒るを定まると云 臭しと香はしと云ひ 饗を祥ひとし 逆を迎ふと訓し 従ふと追ふとよまし 亂を治まると讀の類 是を倒語訓と云り http://dl.ndl.go.jp/info:ndlj…

2002-06-22

■ [和訓栞]和訓栞大綱(161) ○假名反に倒反あり神漏伎神呂美の如き是也 伎は[ひこ]の倒反 美は[ひめ]の倒反とす [こひ]反[き] [めひ]反[み]也 西土にも此例ありし事は世説に見えたり 又二重反あり 故を[かるかゆゑ]と讀か如キ是也 [るか]反[ら] [ゆゑ]反[え]…

2002-06-21

■ [和訓栞]和訓栞大綱(160) ○我邦の書史漢字を假用るに和語は主漢字は客なれば或は字義を借て和語を通し或は類字を取て義を借らす或は好字を借て和語を修し或は漢字を假て人名を修したる事一例ならすといへり http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2562782/51…

2002-06-20

■ [和訓栞]和訓栞大綱(159) ○今の唐音は南京の音をもて天下の正音とす 南京は古へ呉の地なりしかと本大國にて世々を経て其土の繁華なる天下無雙にして人物風流此地に過る事なし 此時に至りては古の荊蠻の風俗易り盡て彬々たる君子の郷となれり 俗既に文雅な…

2002-06-19

■ [和訓栞]和訓栞大綱(158) ○漢音正辨に漢音ハ中原の音古ヘの雅音なれハ韻書の擇ふ所純一にして異なきもの也 唐音ハ彼土郷語の音にして南北方土の音不同なる者也 故に字彙にも讀韻須漢音若任郷語便致差錯といへり台家傳ふる所の例時懺法聲明集の中の漢音純轉…

2002-06-18

■ [和訓栞]和訓栞大綱(157) ○漢音呉音ともに今の唐音といふものと大に同しからす今いふ所の如きは倭の漢音呉音にしてまた西土の漢音呉音にはあらす されは其始め儒典梵書ともに韓國を歴て我邦に傳へたれは韓音倭音相混して今の音とハなれる成べし 聲音もとよ…

2002-06-17

■ [和訓栞]和訓栞大綱(156) ○打聞集に問 唐音は漢音なりや 唐音と漢音其異ありや 答 實は二ツ也 今世人倭音によりて呉音の外は漢音と覺えり 凡そ呉漢唐宋の四音の異あり 白色二字の如き呉音にハ[ひやくしき]といぴ唐音には[はきせき]といひ漢音には[はくしよ…

2002-06-16

■ [和訓栞]和訓栞大綱(155) ○漢音は長安の音 呉音は江左の音なるへし そのゆゑは我邦の西土と使人往來せし始めは後漢書三國史等に見えて 垂仁景行神功の御代にあたれり 況んや後漢倭傳に自武帝滅朝鮮使驛通於漢者二十許國國々皆稱主といへるは國造縣主なとの…

2002-06-15

■ [和訓栞]和訓栞大綱(154) ○悉曇三密鈔に初ノ金禮信來留對馬島 傳呉音舉國學之固名曰對馬音次表信公來筑ノ博多 傳漢音是曰唐音と見え 悉曇藏にも金禮信表信公を舉て我日本元傳二音と見えたり されといかなる書に出ていつれの代にあり いつくの人なりしやら…

2002-06-14

■ [和訓栞]和訓栞大綱(153) ○鴨は平聲なるに鴨川といふ時は上聲 鴨社といふ時は去聲也 つゞきによりて同語も聲のかはる事あり されは古事記に豐雲野神の雲の下に上とあり 雲は本音平聲なるを雲野とつゞく故に上聲となれり 餘も此に傚ひて知へし 固より本音の…

2002-06-13

■ [和訓栞]和訓栞大綱(152) ○我邦に入聲のなきゆゑハもと単音の國にて韻律を主とせす よて西土の音にていへは此方の語は総て入聲の如し 今の唐音にても唯入聲のみ此方の一音の如くにして餘の三聲の類に異れり されは此方の音にていはんに彼國の入聲にも平上…

2002-06-12

■ [和訓栞]和訓栞大綱(151) ○私記に〓土煮尊沙土土尊に就て問此二神御名煮同字也 何故有變聲之讀哉 答是據古事記上煮字讀上聲下煮字讀去聲其由雖未詳如此之神名皆以上古口傳所注置也と見えたり 古事記中に此去聲唯一ありにハ土にて本音去聲なるを比地邇とつ…

2002-06-11

■ [和訓栞]和訓栞大綱(150) ○日本紀の印本に字の四週に圏點せる者は和語の四聲也 されと全備ならす訛謬も又多し 古事記にはそのまゝ上の字去の字なとを句中に注せり 但入聲ハ見えす 又引字を注せるハ梵書に見えて長呼の例也 [はし]と云詞に橋ハ平聲によひ 端…