国語史資料の連関

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2002-07-17

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世の古言を解釈するに。上略中略下略等の説あるなり。我思ふ所には異なり。天地の運。古今の変あるが如きも。なを人生の少長壮大あるが如し。太古の時は人の幼なるが如く。古を相去る事のやゝ遠きに至ては。人のやゝ長じて。かつ壮大に至れるが如し。今試に学語小児の言《コト》を聞くに。そのいふ所最短し。年やゝ長じぬるに随ひて。其言もやゝ長くなり行く程に。遂にまた文にして華ならずといふものなし。古言の略せるが如くなるは其朴也。これを略していひしにはあらず。其朴なるが変じて文となりぬる。其言も亦自から長くなりて。長き事既に極りぬれば。これを略していはざる事を得ず。我思ふ所の如きは。後世の言の如きは。略して云ひしも少からず。またこれを花に比するに。上世の言の如きは。その〓蕾也。中世の言は。其花の開けし也。下世の言は。其花の爛漫に及びし也。其略して云ふは。其花すでに飛で纔《ハツカ》に残れる也。是等の外或は二言を合て一言となれるあり。或は二言を合呼ぷに。下の音を帯びて。上の音にあるあり。是等も亦其語の略せるにはあらず。則これその音の転によれる。また猶紅と緑との色を見るが如し。紅なるは赤白のまじはりてなれる所なり。緑なるは青黄のまじはりてなれる所なり。赤を略して紅となり。青を略して緑となれるにはあらず。