国語史資料の連関

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2002-07-26

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たとへば鋺の字の如き。〓ノ字の俗。〓音豌削也といふ也。此間には金椀となして。読てカナマリといふ。其字の金に従ひ。椀の省に従ひぬるを取るなり。梶の字の如き樹杪也といふなり。此には船柁となして読てカヂといふ。其字の木に従ひ。尾に従ふを取るなり。凡これらの類。此間にして彼字を用ゆる。別に其義のあるなり。もし皆我国の訛謬也といはんには。春秋の三伝に見えし。斉魯の語の同じからぬ。爾雅方言等の書に。四方の異言見えしごとき。彼もし正ならんには。此は謬れるにて。此もし正ならんには。彼は謬れるなるぺし。されどその彼此相同じからぬによりてこそ。異言を通じ。方言を記するの書はあるなれ。しかるを世の人。彼によりて此を非とし。概して乖異訛謬也といふが如きは。通達の論にはあらず。或はまた飲食薬物の類は。彼此相謂ふ所の同じからざる。若し其名を正し。其物を弁ずる事。なからましかば。世の憂を貽す事少なからずともいふべけれど。これも亦しからず。我いふ所の如きは。彼と此との方言あるをいふなり。もし能其方言に相通じて。其物の如き此にしていかにいふを。彼にしてはいかにいふと。云ふ事の疑ふべき事なからむには。なにの憂を貽す事や有ぺき。爾雅の書の如きは。上は天地より始て。下は蟲魚の微なるに至るまで。悉く皆古今四方のいふ所を釈せられけり。