国語史資料の連関

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2002-07-22

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或説にゝ我国の言に借語の例あり。他の名と言葉とを。其儘に借り用ひて。名づけしをいふ。日を借りて火とし。天を借りて雨とする類これ也といふなり。我思ふ所はこれもまた転語なり。たとへば。火の如きをも。ヒとしるしたらんには。其字は日といふに同じけれど其余氷刀檜樋また霊善簸間並等の如き。並にみな古語には。ヒといひしかば。是等もまた皆ヒとしるしなむ事は相同じ。されど其物其事を呼ぶには。亦おの/\相わかれて同じからず。これすなはち其声の平上去入。其音の軽重清濁によれるなり。他の名と言葉とを其まゝに借用ゆとはいふべからず。ましてや古語には。日をぱヒといひ。火をぱホといひけり。されどヒといひ、ホといふも。転音なれば。其初日をヒといふによりて。其音を転じて火をホといひしにや。また日をヒといひ。火をホといふ。おの/\其義ありしにや。火をホといひしを。転じてヒといひしは。或は方言にや出ぬらむ。或は転語にやよりぬらむ。すぺて是等の如きは。今はた知るべからず。雨をアメといふは。天をアメといふを。其儘借用ひしといふが如きは。然るべからす。雨をアメといひしは。なを天《アメ》の水《ミヅ》といふが如し。天より水の降れるの謂《イヒ》なり。古語に水をばミといひけり。詳なる事は雨の註に見えたり。