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2011-01-01から1年間の記事一覧

2011-06-12

■ 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第二節 説話構成の過程(6) 思惟断句と直觀斷句 斷句はその表す斷定の性質に由つて思惟斷句と直觀斷句との二つに分たれる。思惟斷句には有題、無題の別が有り、直觀斷句には概念的、主觀的の別が…

2011-06-11

■ 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第二節 説話構成の過程(5) 斷句は斷定を表す一續きの言語である。例へば「虎は猛獸なり」「雨降り出でぬ」などはそうだ。斷定を表すとは第三頁で言つた通り或る事柄に對する觀念的了解を表すこ…

2011-06-10

■ 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第二節 説話構成の過程(4) 斷定 斷定は事柄に對する主觀の觀念的了解てある。例へば火事を見て「火事だ」と了解すればその了解「火事だ」は一つの斷定である。又警鐘を聞いて「何だらう」と思ひ…

2011-06-09

■ 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第二節 説話構成の過程(3) 觀念 刺戟に因つて知覺が生ずる。例へば光が日に觸れ音が耳に觸れて光の知覺、音の知覺が生ずる類だ。そうして知覺は刺戟が去れば直ぐに消滅する。しかし知覺としては…

2011-06-08

■ 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第二節 説話構成の過程(2) 思念の考察 思想といふ語は種々の意に用ゐられる。論理學でいふ所の思想は思惟作用の産果であつて純知力的のものであるが、文法學で思想といふのは思惟作用ばかりでな…

2011-06-07

■ 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第二節 説話構成の過程(1) 言語は説話の構成上に於て原辭、詞、斷句の三階段を踏む。此の三階段の一に在る者は何れも言語である。そうして原辭は最初の階段で詞が之に次ぎ斷句が最高の階段であ…

2011-06-06

■松下大三郎『改撰標準日本文法」第一編 總論 第一章 言語 第一節 言語の本質及び諸相(6止) 標準語と特殊語 標準語といふ語はもと西洋の Gemein Sprache, Standard language などの譯語である。殆ど文語のない國の語の譯語であるから專ら口語を指す樣に見…

2011-06-05

■ 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第一節 言語の本質及び諸相(5) 聲音語、文字語といふことと口語文語といふこととは違ふ。聲音語は書けば文字語になる。文字語は視れば文字語であるが讀めば聲音語である。唯音を耳へ傳へるか、…

2011-06-04

■ 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第一節 言語の本質及び諸相(4) 文語と口語 我が日本語には文語と口語との二體が有る。言語は聲音語として口から耳へ傳へる場合には自由な變遷をするが、文字語として用ゐる場合は聲音語の樣な自…

2011-06-03

■ 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第一節 言語の本質及び諸相(3) 國語と國語文法 或る特殊の文法に因つて統一され特殊の民衆の間に共通に自由に使用される言語を國語と云ひ、その文法を國語文法といふ。即ち日本人の日本語、支那…

2011-06-02

■ 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第一節 言語の本質及び諸相(2) 文法 言語が多數の人に共通に思想を通し得る所以は、その説話の構成に體系的に統一された法則が存在するからである。此の説話構成の法則を文法或は語法と名づける…

2011-06-01

■ 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第一節 言語の本質及び諸相(1) 言語は聲音又は文字を記號として思念を表示する方法物である。言語には長いのも短いのもある。數十百頁の大論文も幾時間に亙る長演説も言語であるが「なり」「た…

2011-05-02

■ [方言意識史]京都弁の訛りを取りに、祇園で長唄を習う嵐寛寿郎 徹子 で、初めの方は、嵐さんが、京都弁のなまりをとりに、お習いにいらした時お会いになった芸者さんで。嵐 そうです。徹子 どちらで?嵐 祇園町。徹子 でも、今の言葉で撮影に支障があったん…

2011-05-01

■ [言語生活史]同輩者互に殿付け、支配向をばすべて呼捨てにいたし 役所内相互ニ言語等懇意過、卑俗ニ流れ候様ニ而者 如何ニ候間、同輩者互ニ殿付、支配向をハ都而呼捨ニいたし、惣体右ニ准し可申候、私用之文通たりとも、大凡平様之字用ひ、文談等右ニ准し…

2011-04-30

■ 上杉謙信(和田垣謙三『兎糞録』) West Kensington と云ふ英国の地名を「上杉謙信殿」と覚ゆる等は、類似連想を基礎とする一種の記憶法にして斯かる例は他にも多し。 和田垣謙三『兎糞録』大正2.7.14発行(大正2.12.2 16版による)のp.253ツイートする

2011-04-29

■ 揚げ豆腐(石射猪太郎『外交官の一生』) 降りたいときには、“揚げ豆腐ひや”(I get off here の意)と言えば車掌がおろしてくれますしね」と老夫人は笑うのであった。 石射猪太郎(-1954)『外交官の一生』中公文庫p.94 外交官の一生 (中公文庫BIBLIO20世紀…

2011-04-28

■ [文章作法]蛍が二つ三つ(中村秋香『秋香歌かたり』) 遠江なる柿園嵐牛は、俳句にては其頃知られたる人なりしがある時 鍋洗ふ前に三つ四つ蛍かな といふを得て、かゝる情は歌にては言ひ得がたるべしとおもひ石川依平に示しけるに、依平みて余は俳諧の事を…

2011-04-27

■ [文章作法]蛍が二つ三つ(落合直文『将来の国文』) 米洗ふ前に螢の二ツ三ツ こはある有名なる俳諧師がものしたる句なり、この句を作り出てたる時、みつから大によろこび、当時の奇人香川景樹に示したりしに、景樹見て、いかにもおもしろし、されとその螢…

2011-04-26

■ [わたしが作った]「Hの言葉は私がつくった」 この変態性、変質者にかわるスマートな言葉がないだろうか? 等話しあっていた時、私がそうだ変質者、変態性の頭文字はローマ字の「H」だ、今後は代名詞としてHと呼ぼうと提案した。石川君他クラスメートが素晴…

2011-04-25

■ [国字問題][表記意識]数万ある支那の文字を記憶せんより、我 日本の仮名に悉事を記さば大に便利ならん(本多利明「西域物語」) 欧羅巴《ヨーロツパ》に真行草《しんぎようそう》の文字あるやと問人《とうひと》に答《こたえ》ん。彼国《かのくに》に支那、…

2011-04-24

■ 山田孝雄『国語学史』第四章「漢和對譯の字書の發生」新撰字鏡 篆隸萬象名義、東宮切韻に次いであらはれたるは新撰字鏡なり。この書は僧昌住が宇多天皇の寛平四年?に稿を起し、醍醐天皇の昌泰?年間に完成したる書にして、漢字を標出してその音義を漢文にて…

2011-04-23

■ 山田孝雄『国語学史』第四章「漢和對譯の字書の發生」類聚名義抄 倭名類聚鈔を説けるにあたりて論及せざるべからざるは類聚名義抄なり。この書は俗説によれば、菅原是善の著といはる。若し果してその説の如くならば、倭名類聚鈔よりも古き時代の著といふべ…

2011-04-22

■ [言語生活史]【すみません】 『どうか、お願い』という意味で、『すみません』をよくつかうようになったのは、戦後ではないかと思う。それも女性たちが、しきりにつかいだして、だんだん男たちにも感染したのではなかっただろうか。 古波蔵保好「すみませ…

2011-04-21

■ [漢語]鶯亭金升『明治のおもかげ』漢語を使う奴は嫌いだ また幇間を伴《つ》れて遊びに行った客が、向うから来た娘が美しいのを見て立止ると、幇間が、 「旦那、素敵な別嬪《べつびん》ですネ」と言うと客は変な顔をして、急に歩みを早めながら、 「帰れ帰…

2011-04-20

■ [識字]鶯亭金升『明治のおもかげ』無筆 根岸に住みし頃、近くに小岩井甚吉という職人がいた。当時|草履《ぞうり》の下に板を附けた草履|下駄《げた》が流行して多く売れるので、甚吉はこれを作って相応に儲《もう》けていたが、妻は病身なので子がなく、…

2011-04-19

■ 鶯亭金升『明治のおもかげ』鷲の鶏卵・モウは牛なり 鷲の鶏卵猫遊軒伯知《みようゆうけんはくち》は松林伯円《しようりんはくえん》の高弟で、明治の代に新講談で売出したが、北海道の講談をやった時に、うっかり調子に乗って「深山の木の上に鷲《わし》の…

2011-04-18

■ 大矢透『音圖及手習詞歌考』 第二章 阿女都千詞 第四節 阿女都千詞の行はれし時代 阿女都千詞の行はれし時代はといふに、先づ、初めて此の名の見えたるは、宇都保物語なれば、其の書の年代を定めざる可らず。そは、黒川春村の墨水遺稿に、此の物語のことの…

2011-04-17

■ 大矢透『音圖及手習詞歌考』 第二章 阿女都千詞 第三節 阿女都千詞の成立 阿女都千詞の成立は、當時通用の假名を、一音につき、最も普通に用ゐらるゝものを取り集めて同音無き、四十八字を得、これだに記憶したらんには、口舌上の言辞は、自在に記し得らる…

2011-04-16

■ 大矢透『音圖及手習詞歌考』 第二章 阿女都千詞 第二節 阿女都千詞に對する先哲の所見 阿女都千詞につきて、先哲の説を擧ぐれぱ、北邊随筆に、 亡父また云、なには津あさかやまの後は、あめつちほしそらといふことを手ならふ人のはじめとしけるにや。文字…

2011-04-15

■ 大矢透『音圖及手習詞歌考』 第二章 阿女都千詞 第一章 阿女都千詞の出典 第二章 阿女都千詞 第一章 阿女都千詞の出典阿女都千の名の、初めて見えたるは、宇都穂物語国譲中にして、次は順集、次は口遊、次は相摸集なり。北邊随筆には、加茂保憲女集にもあ…