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2011-06-08

松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第二節 説話構成の過程(2) 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第二節 説話構成の過程(2) - 国語史資料の連関 を含むブックマーク はてなブックマーク - 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第二節 説話構成の過程(2) - 国語史資料の連関 松下大三郎『改撰標準日本文法』第一編 總論 第一章 言語 第二節 説話構成の過程(2) - 国語史資料の連関 のブックマークコメント



  思念の考察

 思想といふ語は種々の意に用ゐられる。論理學でいふ所の思想は思惟作用の産果であつて純知力的のものであるが、文法學で思想といふのは思惟作用ばかりでなく直觀作用の産果をも含み、又純知力的なものばかりでなく威情や意志をも含む場合が多い。文藝の研究などに於て思想といふのは文法學でいふのと同じ物ではあるが、これは文法學に於けるが如く唯に言語の内面としての形式的價値をいふのでなく藝術的價値の上から言ふのである。又思想問題とか思想善導などいふ時の思想は人生問題の上よりして、或る體系に統一された思想群の傾向を指すのであるから、文法學でいふ樣な單純な意味ではない。

 思想の構成には二つの階段が有る。第一の階段は觀念で第二の階段は斷定である。此の二階段の一に在るものは何れも思念であつて、思想は之の二つの階段を踏んで始めて成立する。