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1187-01-01から1年間の記事一覧

1187-03-13

■ 唐物語・娥皇女瑛 むかし尭と申す帝おはしましけり。御まつりごとより始めて萬めでたき御代のためしには、まづこの御事をのみこそ申すめれ。娥皇女瑛と聞え給ふ二人の后さぶらひ給ひけり。御心ざしいづれまさり給へりとけぢめ見えず。唯紅紫などのやうに淺…

1187-03-12

■ 唐物語・望夫石 昔、男女あひ住みけり。年などもさかりにて萬行く末のことまで淺からず契りつゝありふるに、この男、思の外にはかなくなりにけり。その後涙に沈みてあるにもあらす覺えけるを、我もわれもとねもごろに挑みいふ人ありけれどいかにも許さゞり…

1187-03-11

■ 唐物語・弄玉 むかし、秦の穆公の娘に弄玉と申す人ありけり。秋の月のさやけく隈なきに心をすましてまたく世の事にほだされず。また簫史といふ樂人あり。秋の月清くすさまじき曙に簫をふく聲哀に悲しきこと限なく、弄玉それにや心を移しけむ、進みてあひた…

1187-03-10

■ 唐物語・徳言 昔、徳言といふ人、陳氏ときこゆる女に相具して侍りけり。かたちいとをかしげにて心ばへなど思ふさまなりければ、互に淺からず思ひかはして年月を經るに、思の外に世の中亂れてありとある人、高きも卑しきもさながらやま林に隱れ惑ひぬ。去り…

1187-03-09

■ 唐物語・張文成 むかし、張文成といふ人ありけり。姿ありさまなまめかしくきよげにて色を好み情身にあまりければ、世にありとある女、さながら心強くは覺えざりけり。そのころ、時に逢ひ華めかせ給ふ后おはしましけり。數多のなかに萬勝れてなむ聞えさせ給…

1187-03-08

■ 唐物語・眄々 むかし眄々といふ人、長尚書に契を結びて幾年經れども露ちり互に心に違ふ事なかりけり。花の春のあした月の秋の夜も、諸共に舞を見、歌を聞きて遊び戯ぶるゝより外のいとなみなし。かゝれども、若き老いたる定めなき世のうらめしさは思の外に…

1187-03-07

■ 唐物語・宋玉 むかし、宋玉と聞ゆる人、かたちすがた世に類ひなく、ざえ才學ならびなかりけり。この人の住みける東の隣に、又世に類ひなく美くしき女ありけり。この宋玉をいかでもと思ふ心の忍ぴ難さに、東のかきに夜晝立ち添ひて窺ひけれど、三とせまで目…

1187-03-06

■ 唐物語・石季倫 昔、石季倫といふ人ありけり。萬の寳に飽きて世の貧しき事を知らざりけり。金谷の園のうちに五百の舞姫を集めて悦び樂む事夜晝を別かす。このうちに緑珠と聞ゆる舞姫なむ、數多の中にも勝れたりければ、身に優りて淺からす思へりけり。かく…

1187-03-05

■ 唐物語・相如 むかし、相如といふ人ありけり、世に類ひなき程に貧しくわりなかりけれど、萬の事を知り、才學ならびなうして琴をぞめでたく彈きける。卓王孫といふ人の許に行きて、月の明き夜終夜きんをしらぺて居たるに、この家あるじのむすめに卓文君とい…

1187-03-04

■ 唐物語・梁鴻 むかし、梁鴻といふ人、孟光にあひ具して年比住みけり。この孟光世にたぐひなくみめわろくて、これを見る人心を惑はして騷ぐ程なりけれど、この男を又なきものに思ひて、かしづき敬ふ事思ふにも過ぎたりけり。朝な夕なにいひがいとりてけこの…

1187-03-03

■ 唐物語・賈氏 むかし、賈氏といふ人、類ひなくかたちわろくて顔美くしきめをなむもちたりける。この女かばかり醜き人とも知らすあひそめにければ、悔しき事取り返すばかりに覺えけれど、いふかひなくて明し暮すに、よき事悪しき事すぺて物も言はすえも笑は…

1187-03-02

■ 唐物語・白樂天 昔元和十五年の秋、白樂天罪なくして江洲といふ所に流されぬ。その次の年の秋、入江のほとりに夜友を送りけり。松風浪の音を聞くに、愁の涙いと抑へがたし。かくて小夜も更け行く程に、空すみわたり月影波に隨へるを見るにつけても、我が身…

1187-03-01

■ 唐物語・王子猷 むかし、王子猷、山陰といふ所に住みけり。世の中の渡らひにほだされずして、唯春の花秋の月にのみ心をすましつゝ【二字てイ】、多くの年月を送りけり。事にじれて情深き【二字ありけるイ】人なりければ、かき曇り降る雪ばじめて晴れ、月の…