1187-03-07 1187-03-07 ■ 唐物語・宋玉 むかし、宋玉と聞ゆる人、かたちすがた世に類ひなく、ざえ才學ならびなかりけり。この人の住みける東の隣に、又世に類ひなく美くしき女ありけり。この宋玉をいかでもと思ふ心の忍ぴ難さに、東のかきに夜晝立ち添ひて窺ひけれど、三とせまで目をだに見遣らざりけれは、戀ひ侘びて、つひに逢ふこと知らぬ涙に沈みはてけり。 「戀ひわびて三とせになりぬ花がたみめならぶ人のまだもなければ」。ゆかしからずはなかりけめど、あまり心の優にて人に物を思はせむと思へりけるにや、又さもやなかりけむ、心のうち知りがたし。 国文大観ツイートする