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2009-02-24

■[方言意識史]小説って東京弁で書いてある(村上龍

龍  ぼくは会話でいちばん苦労したんですよ。ある人に読んでもらったら、「会話がひどい」っていわれたんです。第三稿ぐらいまで書き直したんだけど、いま読み返すと、やはりひどいんですよ。そのころは電車に乗っても、他人の会話聞いたりして、ずいふん勉強しましたね。これは、ぼくにとっては大きな問題だった。ぼくは十八年間、九州弁でしゃべってたわけですよね。小説って東京弁で書いてあるでしょう。ぼくは東京弁が下手なんですね。他人がしゃべってるように書けなかったんですよ。

春樹 ぼくも十八まで関西弁しかしゃべらなかったんで、東京へ出てきてどうなるかと思ったら、三日で完璧にしゃべれるようになったね。あれは、なんか性格の問題じゃないのかなあ。ぼくは順応性が高いらしい。

龍  ぼくはずいぶん苦労したんですよ。

村上龍村上春樹『ウォーク・ドント・ラン』p.27