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富士谷御杖『北邊隨筆』脚結のをもじ

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〇脚結のをもじ

をといふ脚結の事、【脚結とは、世にいふてにをはの事なり、亡父かくいはせたるなり。】亡父成章いへらく、酒はのむためにかみ、ふみはみむためにつくれる物なるが故に、さけをのみ、書をみるとはいふべからず。もし、目しひたる人のふみをよみ、やまひある人の、さけをのまば、必をもじはおくべしといへり。古今集雑下「かぜふけばおきつしら浪たつた山といふ歌の左注に、上下略「よふくるまで琴をかきならしつゝうちなげきて云々。このをもじは、琴ひくべき機嫌ならぬに、心ならずひくさまを、おもはせられたるなり。もと琴は、ひくべき為につくれる物なれば、かゝらむ時こそ、をとはいふべけれ。又いと後の世の歌なれども、新古今、公衡、「かりくらしかた野の真柴をりしきてよどの川瀬の月をみるかな、とよめるをもじ、家にかへりてのちみるべき月を、おもほえず、かた野にて見つるかなとの心を、おもはせてなり。脚結はすべて、をもじにかぎらず、いづれもかゝる心えある物なり。おろかにすまじき事、このひとつにてもしるべし。