2011-03-30
■ 松尾捨治郎校註『あゆひ抄』おほむね下(4)
師曰、状は四むねあること、前にいふがごとし。たゞし芝状・鋪状・は、おなじやうにて、在状・返状・は、たとしへなく、かはれることおほきゆゑに、歌とのみいふときはおほくは芝・鋪・状・のふたつをさせり。
又曰、事の[きしかた](註一)は、いひかためて名となれるあり、これを、[きしかた名](二)といふ。うらみ・かたみ・やどり・すまひ・たびね・などのたぐぴなり。
又曰、里言、装の末をうしなひて、つねになびかしてのみ(三)いふならひとなれり。このゆゑに末をうけたるあゆひに里言をあつるには、みななびかしてうくる也。其條々にはいはす、なずらへて心うべし。
又曰、かざしの、名・裝・脚・にかよふあり。裝・脚・にかよふはしるく心えらるれば、いふにおよばす。名にかよふは(四)、いつ・いづこ・いづく・いづち・いづれ・いづかた・こ・これ・こゝ・そ・それ・そこ・たれ・な・なれ・何・等なり。
又曰、脚の名にかよふは(五)、と・ら・のみ・ばかり・まで・さ・らく・けく・なく・まく・げ・もの・等也。
又曰、脚の裝にかよふこそおほかれ。末(六)・靡(七)・をたてて心うべし。つ・す・ぬ・く・かぬ・らる・しむ・などは末なり。つる・する・ぬる・くる・かぬる・らるゝ・しむる・は靡也。
これらは、事のすぢ也。又めり・たり・なり・かり・あり・けり・などは末也。める・たる・なる・ある・ける・などは引(七)なり。是は孔のすぢ(八)なり。べし・ごとし・は末、べき・ごとき・は引也。これは芝状(九)のすぢなり。又不倫のず・じ・は末也(六)。ぬ・ざる・は靡(七)也、
又ん・けむ。らん・まし・てふ・きしかた(一〇)のし・などはみな末となびきにかよへり(一一)。事のうち無靡のすぢなり。
(六) 終止形。
(七) 連體形。但し、靡は[る]のつく連體形。引は[る]の附かない連體形。
(八) 良變類似のもの。
(九) 久活形容詞。
(一〇) 過去。