国語史資料の連関

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2004-05-04

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 万歳は、もと臣下の君主を寿する語なるはいふまでもなし。桓武天皇延暦の遷都にさいし、平安ならびに聖主万歳の意を表せし踏歌の楽章を作り、その一句ごとに「新京楽平安楽土、万年春」と唱へたりといひ、また『朝野群載』にも、男女の踏歌の楽章を掲げ、一句ごとに「万春楽又は千春天人感呼、聖主億万歳」など唱へたりとあり、『三代実録』に「親王已下五位已上唯と称して再拝す、中納言再拝して万歳と称す、次に群臣共に万歳と称し再拝踏舞す」等の記事あり、『栄華物語』にも、「けふはばんせいせんしうをぞいふべきなどの給ふもあり」など見ゆ。

 明治五年九月十二日、京浜間鉄道開行式あり。午後一時鉄道館に御着、勅語あり、太政大臣祝詞あり、をはりて衆庶に勅語あり、次に在京商人頭取祝詞をたてまつる。その末行に「爰ニ数行ノ賀言ヲ叙へ、以テ天皇陛下ノ明徳万世ノ下ニ垂レ、我億兆ノ民余慶ヲ蒙ランコトヲ謹テ仰ク。君万歳君万歳」とあり、十一年十一月九日の『かなよみ』北陸道より鳳輦還幸の記事中に、「輩下百万の民戸国旗を掲げ、万歳を奏す……我新聞一日印刷の機械車を止めて拝礼の下に属さんとす云々」。

 近年万歳を高唱することは、明治二十二年二月十一日に始まる。この日帝憲法発布の盛典あり、主上観兵の式を行はせらる。ときに大学生、鹵簿を拝して「万歳」を歓呼せしに始まる。

 かく、始めは主上を寿するの民の声なりしが、いまは一般国民同士の間にも、この祝声を発する風とはなれり。また遠く海外にまで知られし祝賀の語とはなれり。

  雲の上に聞えあげよとよばふらし年の初めの万歳の声