国語史資料の連関

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2007-03-08

古語の復活「涙ぐまし」 古語の復活「涙ぐまし」 - 国語史資料の連関 を含むブックマーク はてなブックマーク - 古語の復活「涙ぐまし」 - 国語史資料の連関 古語の復活「涙ぐまし」 - 国語史資料の連関 のブックマークコメント

 第一次世界大戦のあとで世界的に人の心が、一方に唯物的になり他方には感傷的になった。そして天譴的關東大震災が日本をいましめた。その頃のセンチメンタリズムが一つの時代的概念を作って、その能記として『涙ぐまし-い」を生み出した。當時之がはやって、少々鼻についたものであるが、その爲の反感によって之を俗悪な造語と斷じ、日本語の本性に合はないと罵った国語學者があった。併しそれは速斷であって、萬葉三に『獨りして見れば涕ぐましも』とあり、古事記にも『あがせの君は那美多具麻志も』とあるのである。即ち国語學者さへも うっかり新創作だと見たほど、忘れられてゐた古語が掘り出されたのである。

石黒魯平言語学提要p193