2012-03-29
■ [語源説]「凶の字の唐音ヒョン」(新井白蛾「闇のあけぼの」)
○まじなひは、上古には大醫院の下屬に禁厭師有まじなひせし事也。故に醫書も古書にはまじなひを載たり。摩針灸藥外療にても治せざれば、まじなひ秡除までも行ふものを、醫門の下に置給ふは、聖人民を救ひ憐給ふ仁政の餘惠なり。祥に前の醫生に示す文を讀べし。
今按るに、神代の卷に大巳貴命、少彦名命と力を戳心をひとつにして、天下ををさめ、民の病ひを療め、猶また鳥獸昆虫の災厄を攘んが爲に禁厭の法を定め給ふ事見へたり。蠱物と書てまじものと訓、易の蠱の卦の蠱の字のよみ也。又災青の字皆わざはひと訓、又まじこりとよむ。此よみ轉じてまじなひの訓有。又世俗の惡き事は、何にかぎらずヒヨンなことといふ。是は凶の字の唐音ヒヨンなるを和語に用ゐ來れり。