2007-10-04
■ [漢語]耳で聞いて混雑を起さぬだけの漢語を保存する事(上田萬年)
第二 耳で聞いて混雑を起さぬだけの漢語を保存する事
二千年来我国に用ゐられて居る漢語を、一朝一タに淘汰しようといふのは、誠にむづかしい仕事には相違ありませぬ。なか/\すぐに結果を見ようなどゝいふ事も望まれませぬが、しかし、国民がお互に気をつけあって、せめて同音語だけでも、なるべく早く淘汰しようといふことには、是非したいと思ふ。それは此の同音語といふものは、耳で聞いて到底わけのわからぬもので、一種をかしな余計な言葉数を増さなければわからぬものであるからである。たとへば、
コーシャク 公爵 侯爵
シリツ 私立 市立
クワガク 化学 科学
ブンクワ 文科 分科
センシヨク 染色 染織
オンガク 音学 音楽
シンリ 真理 心理
シガク 史学 斯学
のやうにこんな同音語はまだ/\幾百もある。われ/\は話す時にはキミシヤク、のコーシヤク、リテレーチュアのブンクヮ大学などいふのである。万事万端漢字から割出した時代はしらず、又文字の上でばかりおもな事柄を弁じた時代はしらず、今日の日本帝国では、こんな事ではとても用は弁じない。そこで私はまづ此の同音語から手をつけはじめて、それからだん/\他の漢語で聞きとり悪いものを棄てるやうにしたいと思ふ。http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=59001600&VOL_NUM=00000&KOMA=54&ITYPE=0
「国語に就きて日本国民の執るべき三大方針」(明治三十五年八月稿)
明治文學全集 44 落合直文・上田萬年・芳賀矢一・藤岡作太郎
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