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2007-05-03

■ [近代語][江戸語]太宰春台「独語」


父の語りきかせつると、我まのあたりみつることを思ひつづくれば、百年の世態歴々として目の前にあるがごとし。(中略)つく〴〵と百年このかたの風俗を思ひくらぶるに、余所のことをばおいて、江戸の人の風俗こそ殊に昔にかはりたれ。(中略)都《すべ》て男女の風俗、言葉づかひ、物の名まで、近き比は京に似たること多し。京は公家の外、工匠商作のみなれば、人の心柔弱にして利にかしこく、江戸は武家の都なれば、あづまうどの心粗暴にて利にうとし、然るに三十年以来は、江戸の人、京の風俗を学ぶ故に、武士の心も昔にかはれり」


真田信治『標準語の成立事情』

徳川宗賢(1978)『日本人の方言』筑摩書房 p.83

徳川宗賢『叢書日本語の世界 言葉・西と東』中央公論社 p.105

中田敏夫「風来山人の言語描写」『ユリイカ』1988.04 特集平賀源内

杉本つとむ『東京語の歴史』p.122