1901-02-23
■ 堺利彦「地方と首都」
すでに都人士と成りすましたる以上は土くさきいなか言葉の細君を迎うるをいさぎよしとせず、
(中略)
これにつきて、予輩は特に学生諸君、代議士諸君らに告げんと欲す。何となれば、これらの諸君は最も有力なる各地方の代表者なればなり。
つらつら東京における諸君の行跡を見るに、はなはだ敬服すべからざること多し。諸君はまずその国言葉を恥じて江戸言葉を学ばんとす。方言の通じがたきを改むるはもとより可なり、しかれども巧みにストライキ節をうたうに誇らんとするがごときは何らの愚ぞや。将来全国通用語の発生すべきこともちろんにして、その通用語の東京語をもととするものなるべきことまたもちろんなれども、東京にはまた東京の方言あり、東京の方言は各地方の方言と同じくその使用を避けざるべからず。しかるにその東京の方言を学び得て得々たるがごときは愚の窮みと言わざるべからず。地方新聞紙ができそこないの東京語を用いて得意然たるがごときもはなはだ笑うべきことなり。
『万朝報』(明治三四、二、二三)