2012-09-02
■ 雑炊(浮世物語4-9 七草をたゝく狂歌の事)
今はむかし、正月七日のあした七草をたゝく。寅の一點より拍子をとりて、かしましくうちたゝく。そののちは増水にして喰ほどに、あまりすいた物ではないとおもひつゝ、うき世房かくよみて、小性衆にかたりけり。
七草をいきをひげにはたゝけども餅つくをとにはるかをとれり
かやうによみ侍べり。増水を御すきのかたは是非もなし。此歌の下の句の「はるか」といふ「は」の字を、いかにも永々とひいて、吟じて給はれと語りき。
うき世房は、増水がことの外きらひにて、そのかみ道心おこしける折ふし、世間おほいに米たかゝりければ、寺に朝夕増水ばかりを食はせけり。そのときかくぞ思ひつゞけける。
山田もる身ほども米をもたざればみそうづのみにあきはてにけり
とよみて寺をば出にけり。http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/945807/196