2012-03-27
■ 凡例(清水平一郎『佐賀県方言語典一班』)
凡例
一、この書は嚮に出版した辭書の缺を補はむ爲に編述したのである。
三、拗音、促音は右下に小字を以て記し、引音(長音)は右肩に線を引いておく。たとへば
ひャ‾あ(hyā) でャ‾あわッか(dyāwakka)
、語法も地方により幾分か違ってゐる。因て、その行はるゝ版圍*1を示すことは、上田博士の御教示もあり、編者も必要を感じてゐる。しかし取調が一寸出來ないから、詳しいことはあとに譲り、たゞ舊幕時代の領地圖をそへて大体丈を示すこととした。固より杜撰の誹は免れない。
一、書中、西部とあるは、多久、武雄を中心として、その近傍より以西をさし、東部とあるは、佐賀、小城などを中心として、その近傍より東をさしたのである。鹿島地方は両地方の中間ともいふべく、田代はむしろ筑後に似より、唐津は特別にて、その城下のごときは、江戸語そのまゝである。故にこの本を佐賀縣語典といへど、唐津はとりのけであることをこゝにことはっておく。
明治三十五年七月
*1:「範圍」か「版圖」か。