国語史資料の連関

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2007-09-14

古今集遠鏡例言 12 古今集遠鏡例言 12 - 国語史資料の連関 を含むブックマーク はてなブックマーク - 古今集遠鏡例言 12 - 国語史資料の連関 古今集遠鏡例言 12 - 国語史資料の連関 のブックマークコメント

「ん」は、俗言にはすべて皆ウといふ、「來ん」「ゆかん」を、コウイカウといふ類也、「けん」「なん」などの「ん」も同じ、「花やちりけん」は、花ガチッタデアラウカ、「花やちりなん」は、花ガチルデアラウカと譯す、さて此、チッタデといふと、チルデといふとのかはりをもて、「けん」と「なん」とのけぢめをもさとるべし、さて又語のつゞきたるなからにある「ん」は、多くはうつしがたし、たとへば「見ん人は見よ」、「ちりなん後ぞ」、「ちるらん小野の」などのたぐひ、人へつゞき、後へつゞき、小野へつゞきて、「ん」は皆なからに有り、此類は、俗語にはたゞに、見ル人ハ、チッテ後ニ、チル小野ノとやうにいひて、見ヤウ人ハ、

  なん          らん

チルデアラウ後ニ、チルデアラウ小野ノ、などはいはざれば也、然るに此類をも、しひてん「なん」「らん」の意を、こまかに

                     なん

譯さむとならば、「散なん後ぞ」は、オッツケチルデアラウガ ソノ散タ後ニサと譯し、「ちるらん小野の」は、サダメテ此ゴロ

       らん

ハ萩ノ花ガチルデアラウガ其野ノ、とやうに譯すべし、然れども、俗語にさはいはざれば、中々にうとし、同じことながら、「春霞たちかくすらん山の櫻を」などは、山ノ櫻ハ霞ガカクシテアルデアラウニ、と譯してよろしく、又かの「見ん人は見よ」なども、見ヤウト思フ人ハとうつせば、俗語にもかなへり、歌のさまによりては、かうやうにもうつすべし、