国語史資料の連関

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2007-09-13

古今集遠鏡例言 11 古今集遠鏡例言 11 - 国語史資料の連関 を含むブックマーク はてなブックマーク - 古今集遠鏡例言 11 - 国語史資料の連関 古今集遠鏡例言 11 - 国語史資料の連関 のブックマークコメント

てにをはの事、「ぞ」もじは、譯すべき詞なし、たとへば「花ぞ昔の香ににほひける」のごとき、殊に力を入れたる「ぞ」なるを、俗言には、花ガといひて、其所にちからをいれて、いきほひにて、雅語の「ぞ」の意に聞カすることなるを、しか口にいふいきほひは、物には書とるべくもあらざれば、今はサといふ辭を添て、「ぞ」にあてて、花ガサ昔ノ云々と譯す、「ぞ」もじの例、みな然り、「こそ」は、つかひざま大かた二つある中に、「花こそちらめ根さへかれめや」などやうに、むかへていふ事あるは、さとびごとも同じく、こそといへり、今一つ「山風にこそみだるべらなれ」、「雪とのみこそ花はちるらめ」、などのたぐひの「こそ」は、うつすべき詞なし、これは「ぞ」にいとちかければ、「ぞ」の例によれり、「山風にぞ云々」、「雪とのみぞ云々」、といひたらむに、いくばくのたがひもあらざれば也、さるをしひていさゝかのけぢめをもわかむとすれば、中々にうとくなること也、「たが袖ふれしやどの梅ぞも」、「懸もするかな」、などのたぐひの「も」もじは、マアと譯《ウツ》す、マアは、やがて此もの轉れるにぞあらむ、疑ひの「や」もじは、俗語には皆、カといふ、語のつゞきたるなからにあるは、そのはてへうつしていふ、「春やとき花やおそき」とは、春ガ早イノカ花ガオソイノカと譯すがごとし、