国語史資料の連関

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2007-06-17

芥川龍之介の「言海」(「澄江堂雑記」) 芥川龍之介の「言海」(「澄江堂雑記」) - 国語史資料の連関 を含むブックマーク はてなブックマーク - 芥川龍之介の「言海」(「澄江堂雑記」) - 国語史資料の連関 芥川龍之介の「言海」(「澄江堂雑記」) - 国語史資料の連関 のブックマークコメント

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     二十四 猫

 これは「言海げんかい」の猫の説明である。

「ねこ、(中略)人家ジンカチヒサキケモノヒトトコロナリ。温柔ヲンジウニシテヤスク、マタネズミトラフレバフ。シカレドモ竊盗セツタウセイアリ。カタチトラ二尺ニシヤクラズ。(下略げりやく)」

 成程なるほど猫はぜんの上の刺身さしみを盗んだりするのに違ひはない。が、これをしも「竊盗せつたうノ性アリ」と云ふならば、犬は風俗壊乱の性あり、燕は家宅侵入の性あり、蛇は脅迫けふはくの性あり、てふは浮浪の性あり、さめは殺人の性ありと云つても差支さしつかへない道理であらう。按ずるに「言海」の著者大槻文彦おほつきふみひこ先生は少くとも鳥獣魚貝ぎよばいに対する誹謗ひばうの性を具へた老学者である。



白石大二「現代語辞典のあるべき姿」(「国語学会会報」十一、昭和二十三年十月)(武藤2002が引用する)

高田宏『ことばの海へ』

芥川竜之介の「澄江堂雑記」にも、高見順の「言海礼讃」にも、唐木順三の「言海』の大槻文彦」にも引かれている

山田俊雄『詞林逍遙角川書店p18

武藤康史2002『国語辞典の名語釈』三省堂 p5~