2007-06-17
■ 芥川龍之介の「言海」(「澄江堂雑記」)
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/3745_27318.html
二十四 猫
これは「
言海 」の猫の説明である。「ねこ、(中略)
人家 ニ畜 フ小 サキ獣 。人 ノ知 ル所 ナリ。温柔 ニシテ馴 レ易 ク、又 能 ク鼠 ヲ捕 フレバ畜 フ。然 レドモ竊盗 ノ性 アリ。形 虎 ニ似 テ二尺 ニ足 ラズ。(下略 )」
成程 猫は膳 の上の刺身 を盗んだりするのに違ひはない。が、これをしも「竊盗 ノ性アリ」と云ふならば、犬は風俗壊乱の性あり、燕は家宅侵入の性あり、蛇は脅迫 の性あり、蝶 は浮浪の性あり、鮫 は殺人の性ありと云つても差支 へない道理であらう。按ずるに「言海」の著者大槻文彦 先生は少くとも鳥獣魚貝 に対する誹謗 の性を具へた老学者である。
白石大二「現代語辞典のあるべき姿」(「国語学会会報」十一、昭和二十三年十月)(武藤2002が引用する)
高田宏『ことばの海へ』
芥川竜之介の「澄江堂雑記」にも、高見順の「言海礼讃」にも、唐木順三の「言海』の大槻文彦」にも引かれている