2007-06-14
■ [言語生活史][人名]「諱字の説」(菅茶山)
一 諱字《いみな》の説 諱《いみな》に木火土金水を次第してつくること、いつの頃に始りしか宋人ことに多し。張|浚《しゆん》の子名は拭《しよく》、朱子の父は松、子は塾《じゆく》、在後に俊《しゆん》あり、その子|余多《あまた》ありけれども記《き》せず、明《みん》の天子或は朱子の遠孫なりとて、代々の諱これに従がはれしといふ、これ王相の説にとるにはあらざることしるし。世遠くなり扁傍《へんつくり》によりて、誰はたれの兄弟何某は何某の子孫などいふをしるに便りあり、排行《はいぎやう》の称呼すたれし後はこれ亦|益《えき》あり。吾邦近世は、俗薄くして兄弟といへども、貧なれば歯《よはひ》せられざる者あるにいたる、五行を必とせず、一門はよくそれとしれる称を用ひて、やゝ流弊をたむるにたよりすべきにこそ。
隨筆大成1-1