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富士谷御杖『北邊隨筆』物語ぶみの詞

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物語ぶみの詞

宇都保物語時代作者ともに詳ならねど、源氏物語絵合の巻に、「竹とりのおきなに、うつぼのとしかげの巻をあはせて、と古物語に列せられたり。げにおほかたの事がらも、詞づかひなども、ふるめきたり。かの四町など、宇都保物語をまねばれたる所もみゆ。されども、うつぼ物語も、源氏物語も、詞はふるきもあり。また俗語のまゝをかゝれたるもまじり、なほ字音をさながら用ひられたる、詞なども多きぞかし。狭衣は、紫式部がむすめ、大弐三位の作なれば、源氏物語とは、いさゝかのおくれなるを、「法師だてら、などいふ詞さへみえたり。宣長ぬし、すでに源氏物語のことはあげつらはれき。げに御国の文章純粋なるものは、祝詞宣命なり。しかれども、これのうち宣命は、字音ながら用ひられたる所々うちまじれり。用捨あるべし。されば文章は、たゞ祝詞宣命のごとく、かくべき事なりとはいへども、かく新古雅俗を心えわきてのちは、いかにも/\かくべきぞかし。たとはゞ、「かなといふ脚結は、中昔よりいで来て、かみつよにては、「かもとのみよめり、【疑のかもをも、ひとつに「かもとよむ事、かみつよの例なり。】かく心得てのちは、「かもゝよむべく、「かなもよむべきがごとし。大かた後世の文章は、中頃のすがたを学ぶやうなれど、所詮は真名ぶみを、仮名にうつしたる物のごとし。いにしへに照して、こゝろをもちふべきなり。