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2005-03-15

[]明治初年の著訳書(明治事物起原 第八) 16:45 明治初年の著訳書(明治事物起原 第八) - 国語史資料の連関 を含むブックマーク はてなブックマーク - 明治初年の著訳書(明治事物起原 第八) - 国語史資料の連関 明治初年の著訳書(明治事物起原 第八) - 国語史資料の連関 のブックマークコメント

 明治十一年十二月刊行『溺濘叢談』第一号、末広重恭の「著書翻訳は時勢に従ふの論」の中に左のごとくいへり。(節約)

「今日、木版に刻し、活字に刷し以て世上に発行する者、殆ど汗牛充棟に至る、然れども細かに其の間に就て之を調査するに、其の新刻書目中に於て、十の八九は概ね欧米諸国の書籍を翻訳する者に係り、其の真成の著作編纂と称す可き者は、実に晨星の落々たるに異らず、明治の初年より今日に至る迄の景況を歴観するに、其の流行は年々に変遷有り、殆ど新陳交代の勢を為せる者の如し、其の種類を大別すれば、維新前後より明治二三年に至るまで流行を社会に得たるは、弘く西洋の事情を記し、及び簡略なる万国史英米歴史等なりしが、一変して政体書と為り、再変して法律書と為り、一両年前よりして、翻訳書中に小説雑記等の専ら風俗人情を記載する者を現出し、遂に此等の種類に非ざれば流用を世間に得る能はざるの情景を為すに至れり」

と。簡にして要を得、もつて明治初年の出版書類の概説となすことを得ん。