2004-05-17
■ 家庭の熟字(石井研堂・明治事物起原・人事部)
家庭といひ庭訓といふ、古来慣用の言語なれども、近来ことにこれを口にするに至れるは、明治九年九月十三日、慶應義塾出版社より『家庭叢談』を出せしによる。その発行緒言中に、「唯一家内の事のみを記して家の外をば顧ずと云ふ趣意には非ず、世上新聞紙の卑俚の記事多を歎き、清潔なる新聞紙を供給せんとの目的なる事」を述べおけり。
二十三年八月『女学雑誌』第二二四号に、「近頃、ホームと云へる語は普通の如くなり行たり、数年前、吾人が『日本の家族』数篇を論出し、初めてホームと云へる語をば高く吹聴せしより、年月は此の微なる種を発育して、今や到る処に其声反響せり、……於是乎、ホーム、スヰートホーム、(原註、室家、団欒せる好き室家)と云へり、言辞切りに流行し、女子教育者も亦た之を口にして、其教育の理想は然ありといふもの多し」。
大正版
p18-19
【参考文献】