国語史資料の連関

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1695-02-01

蜆縮凉鼓集 (序) 蜆縮凉鼓集 (序) - 国語史資料の連関 を含むブックマーク はてなブックマーク - 蜆縮凉鼓集 (序) - 国語史資料の連関 蜆縮凉鼓集 (序) - 国語史資料の連関 のブックマークコメント

假名文字使蜆縮凉鼓集

 抑モ此ノ書を編纂する事は、吾人、言ヒ違ふる詞・書き誤れる假名文字あるを正さんため也。其ノ詞、他にあらず、「しちすつ」の四の音なり。此ノ四字は清て讀ムときに素より各〻別なるがごとくに、濁りて呼ぶ時にも亦同じからず。然るに今の世の人、「しち」の二つを濁りては同じうよび、「すつ」の二つをも濁りては一つに唱ふ。是レ甚しき誤り也。啻ニ口に唱ふるのみならず、文字をも亦、相ヒ混じて用ふ。蓋シ口に分れざる事は心に別ちなければ也。心に分たざるが故に文字をも亦思ふまゝに書ぬる者成ルべし。豈ニ是レ語音の失錯・文章の瑕疵ならずや。某、不肖を忘れて世俗通用の詞に付て、彼ノ四音に預かれる文字を書キ集めて一編となす。其ノ違へる所は識者の改正に任せ訖(オハン)ぬ。凡ソ此ノ冊を見ん人、若シ兼ネて彼ノ四音の異なる事を知ラざらんに、是より始て其の別ち有る事をしれらば、音韻の道にをいて違はざるに庶(チカ)かるべし。

 元祿第八歳次乙亥二月朔 鴨東蔌父書于賓餞堂之西軒

参考文献

亀井孝「蜆縮凉鼓集を中心にみた四つがな」